テオ・ヤンセン展に想う

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ちょっとしたきっかけで、「テオ・ヤンセン展」なるものを楽しむ機会を得た。テオ・ヤンセン氏は現代のレオナルド・ダ・ビンチとも言われる、国際的なアーティストでありエンジニアでもある。ヤンセン氏の展示会は、世界各地で開かれているが、幸運なことに今年はわが町、札幌で開催された(昨年は福島県、その前は沖縄県で開催されている)。

テオ・ヤンセン氏と作品についてはこちらから。

残念ながら、実際に風で動くデモンストレーションは見られなかったが、作品を間近でみることができ、パーツを手に取ることもできた。氏の作品は様々なWEBサイト等で観ることができるが、やはりこういうものは実際に見るに限る。生物のように動く物体だが、電気もガソリンも使われず、動力は風だけだ。

全高4m、全幅9mの巨大なビースト Plaudence Vela
オルディス(Ordis)の動きを手動でじっくりと把握
モトの材料はホームセンターで売られているようなものだけ

GASKETの主たるターゲットである、デジタル、エレクトロニクスの世界とは対極にあるように思えたが、ヤンセン氏がこの動きを得るためには、コンピュータを駆使した高度な計算と膨大なトライアンドエラーの末だという。

ATARI ST520  なかなか香ばしい色になっている

ヤンセン氏が使用していたATARI製ST520コンピュータが展示されていた。(このマシンにヒットしちゃった方はこちら)Motorola社68000を搭載し、約35年前に初期モデルが発売された。ちなみに、サウンドボードはヤマハ製である。

企画→設計→試作→製造 といったモノづくりのプロセス(サイクル)において、ヤンセン氏は2番目の「設計」段階でのコンピュータ活用にすぎなかったが、現代ではあらゆるモノづくりプロセスにおいて、コンピュータを活躍させることができるだろう。

例えば、昨今の技術を使えば、「風だけで、生物のように動く物体を、ホームセンターで購入できる材料だけで作れ」と、AIに命じたら、ヤンセン氏の作ったオブジェクトよりさらに速くて精巧に動くビーストを、瞬時に設計し、原材料を手配し、ロボットが組立てて「ハイ、できました」と、目の前に出してくれる日が来るかもしれない。

さて、ところで、将来のコンピュータ(AI)はモノづくりの「企画」よりさらに前の段階、なんとなく「おもしろそう」とかいうプロセス~「思いつき」みたいなフェーズ~で活躍できるだろうか? ここで重要なことは、他の人にとって「つまらない」「理解不能」「不合理」な「思いつき」は排除されてはならないということだ。つまりは、その段階で一般的な基準や過去データに基づく「評価」をして排除したりしてはいけないのだ。

少なくとも当面は、「企画」以降のプロセスで大活躍することが期待されるコンピュータ(AI)。「思いつき」レベルでの活躍は少々難しいのかと思う。新たな商品やサービスの企画・設計は非常に価値の高いシゴトだが、さらに、もうちょっと前段階、「こんなんおもしろいなぁ」「なぜかわからんけど好きだ」と「思うこと」「感じること」が重要な価値(=シゴト)になるような気がする。つまり、なんとなく思うことや、感じるきっかけになること(今では「遊び」「余暇」「趣味」とされているようなもの)をすることが「働く」ことになるということだ。

とかく、コンピュータ(AI的なもの)が人々の仕事を奪い、全部取って代わられるとか、シンギュラリティを超えてコンピュータが我々人類を支配するとか説く人もいるが、そういう世界になれば、より「人間的」な、理屈じゃ説明のつかない思いや活動が価値を持つ世界が待っているのではないかと思えるのだ。

ヤンセン氏の作品から、少々飛躍してしまった。 普段、地味な事務仕事をしている筆者だが、実はこういった「なにこれ!おもしろい!変!」というモノを世の中に送り出すことを生業としてみたいと想うのであった。