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ベトナムでgrabを使いながら日本に足りないことを考えた

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夏休みを利用してベトナムに来ている。東京から6時間程度。香港のちょっと先くらいで、異国情緒やリゾート気分を楽しめる。物価も安く、食べ物のテイストも全般にマイルドで、子供連れにはありがたい限りだ。

これまで、旅行と仕事の両方で、何度か訪れているが、気がつけば4年ぶりである。成長著しい新興国にとっての4年は、日本の感覚だと2の4乗で16年だろうか(無論これは感覚値である)。実際、成長著しかった頃の上海は、訪れるたびに摩天楼の姿が変わっていると言われたものだ。

ベトナムの場合は、資本主義経済を一定程度認めながら、国土全体の均衡発展も意識しているようで、そこまで急激には成長していない印象だ。一応は社会主義政権であるということと、中国の急成長による社会構造の歪みを間近で見たことから、適正なコントロールを敷いているのだろう。

実際、スマートフォン普及はまだ発展途上に感じられる。SIM購入のために飛び込んだキャリアショップでも、ディスプレイされている端末の半分はフィーチャーフォンだった。なにより、首都ハノイの旧市街を歩いていると、昔懐かしいノキアの着信音が聞こえることが、日に何度かはある。
もちろん、若い世代は当然スマートフォンを使うし、街中ではLTEを普通につかまえられる。ここもジェネレーションギャップがあるのだろうし、それは単に可処分所得やリテラシーというだけでなく、「デジタルにどれくらいお金を使うか」という、生活者としての基礎的な意識の違いなのだと思う。

そんなベトナムなので、特に旅行者の足は、grabである。uberを使ったことのある人なら何の違和感もなく使えるUIとUXで、正しくアジア版uberと言っていいだろう。ベトナムに限らずアジア圏全域で、もはやgrabがメインだといっていい。

今回はじめてgrabを使ってみた。はじめてなので、やはり最初はほんの少し心配したが、これはuberを使った時も同じ。そして一度、二度使ったら、もう三度目にタクシーには戻れなくなる。それくらい、便利で快適である。
なにしろ家族連れの場合、人数や荷物が多いので、ハノイでよく走っている小型ハッチバックのタクシーでは乗り切れないことが多く、予め車種を選べる配車アプリの機能はとても有り難い。そして旅行の時に常に面倒な決済も、アプリ登録時のクレジットカード決済なので、何ら気にする必要がない。こうしたストレスから解放された感覚は、とても大きい。

ただし、見た目に分かるわけではないのだが、あまり市民が普段の足としてgrabを使いこなしているという印象はない。むしろuber eatsのような出前サービスとしてのgrabの方が親しみがありそうだし、その競争はとても激しそうだ(grabの他にgovietというサービスもある)。タクシーは相変わらず元気にあちこち走り回っているし、いわゆる「新興国あるある」で走行は常にカオス状態なので、都市生活者であればプロが運転するタクシーの方が、自家用車に比べて便利で安心なのだろう。あの小さなハッチバックを見ていると、おそらくかつての「シクロ」がタクシーに正常進化したように思える。

ベトナムのモビリティ事情に詳しいわけではないので、あくまで旅行者としての体験に基づく所感だが、ベトナム市民が少人数で動き回るのにはタクシー、観光客を含めて荷物や人数が多いなど少し事情があったら配車アプリ、というような役割分担が当面進むのではないだろうか。

そしてコントロールされた経済発展に沿ってアプリエコノミーが進捗した時に、タクシー産業やモビリティについて新たな施策を政府が打ち出すような気がする。そう考えると、様々な選択肢や成功・失敗事例を眺めながら合理的な判断を下せる、いわゆる後発の優位性を、ベトナムはうまく活かせる立場にあるようにも思える。

都市生活者にとってのモビリティは、21世紀で世界的に共通する重大課題だ。そしてこれは残念ながら、民業だけで解決することはできない。道路は公共のものだし、道路計画はコミュニティ全体での合意形成が欠かせない、正しく政(まつりごと)そのものだからである。だとすると、ベトナムのような冷静なアプローチはあってもいいし、むしろ課題解決そのものにフォーカスするだけなら、優位性があるのかもしれない。

もちろん、先行者にしか得られない果実もある。そこで培った技術やソリューションは先行者が所有できるものだし、それによってより新しい付加価値を見出すこともできるだろう。しかしそれはすべて「可能性」の話であって、先行者がその利益を最大化するためには、ただ単に先行するだけではなくて、その利益を最大化するための「別の努力」をしなければいけない。

おそらく日本でうまくいっていない分野は、総じてその「別の努力」が足りないし、だとしたら何でもかんでも先行すればいいというものでもない。それならばベトナムのように、むしろ一つの問題をキッチリ解決しきった方が、社会を先に進めるのかもしれない。そんなことを妄想させられる、ベトナムであった。

最近はハノイへLCCも飛んでいるようだし、欧州や米国への国際線の乗り継ぎでちょっと訪れることもできそうだ。機会あらば、ぜひ訪れてみていただきたい。

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