新ブランド「CAST:」でシネマコマースに挑む三陽商会

Digital Signage/IoT/Media /

2019年8月1日に三陽商会は、「人生という物語を、演じるための服。」を商品コンセプトに女性向け新ブランド「CAST:」を立ち上げた。

CAST:では、1つのブランドに価値観やライフスタイルが異なる架空の女性3人、LISA、ANNA、CARAをアイコンにした3ラインを展開。オンラインストアでは、その3人の女性を主人公とした映画を見ながら、身につけているファッションアイテムを購入できる「シネマコマース」を行うほか、店舗では3人の女性の部屋を模したブースごとに商品を展示している。また、RFIDを使った新たな店舗体験や業務負荷の軽減を図っている。

1ブランドのなかに、LISA、ANNA、CARAの3人のアイコンがおり、それぞれでライン展開されている。店舗もECも、この3ラインで構成されており、また映画もこの3人が主人公となっている。
1ブランドのなかに、LISA、ANNA、CARAの3人のアイコンがおり、それぞれでライン展開されている。店舗もECも、この3ラインで構成されており、また映画もこの3人が主人公となっている。

シネマコマースは、オンラインストアやアプリ上でオンデマンドでCAST:オリジナルの30分ほどの映画を視聴できるようになっており、シーンごとに3人のキャラクターが着用しているファッションアイテムが紹介され、その場で購入できる仕組みだ。ブランドのペルソナ、映画の主人公が一体化しているからこそできる試みとなっている。ただ、現段階では、ユーザーエクスペリエンスとして映像の視聴と、商品の購買をどのようにつなげていくかについて作り込みが弱い。たとえば、いまのUIだと商品の「購買」ボタンを押下すると、商品詳細ページに遷移してしまって映像の視聴が完全に途切れてしまう。また、商品詳細ページでは、映画のなかでどのように使われていたかについて、まったく説明がなく、動画へのリンクもない。動画と商品購買が密接させることがマーケティング上の正解だとは言わないが、それにしても、単純に「見にくい」「買いにくい」のはまずい。シネマコマースにおいて、視聴者にどのような体験をさせたいのかを、もう少し作り込んでほしかった。

PCでコマースサイトにアクセスしたときのスクリーンショット。映画が放映されている枠上部にある「LISA」「ANNA」「CARA」のボタンを押すと、視聴シーンでそれぞれが着用しているアイテムが表示され、「BUY」ボタンで商品詳細へと遷移する。

こうした企画はスマホでの視聴や購入がメインになる可能性が高いのでスマホでも確認したが、こちらのほうが動画と商品のバランスや動線は優れていると思った。

スマホで表示した場合

渋谷の店舗は、古い映画館をイメージした外観があり、プロジェクターを使って映画を放映はしているが、とくに映像と連動した見せ方は行っていない。ただ、この3人の登場人物の部屋を模した3つのブースで構成されており、ラインごとにアイテムを見られるようになっている。

古い映画館のような外観。
古い映画館のような外観。

すべての商品にはRFIDタグがつけられているため、在庫管理をそれで行うほか、店舗内のミラーサイネージに近づけると、商品情報を表示される仕組みが導入されている。現段階では、コマースサイトの商品ページへのリンクとなるQRコードが表示されるだけだが、これからInstagramとも連携させ、着用スタイリング例などのコンテンツを増やしていき、試着を確認するとともに、着こなしの提案などを行えるようにするとのことだ。

店内には、アイコンごとの3つのブースで構成されている。これはANNA。
店内には、アイコンごとの3つのブースで構成されている。これはANNA。
RFIDタグを使ってスマートミラーに商品情報を掲示している様子。
RFIDタグを使ってスマートミラーに商品情報を掲示している様子。

1つのブランド内に3人のペルソナを立て、それごとのラインを作るだけでなく、ペルソナの個性や物語をより深く作り込んでシネマという形で視聴者とも共有するのは、仕掛けとしては面白い。ただ、これを成功させるには、LISA、ANNA、CARAという3人のペルソナが、生活者が持っている潜在的な憧れを具現化した存在でなければならないし、映像や店舗での展示を通じて生活者が共感されるアイコンとして確立されなければならない。これを実現するには、ブランドからの継続的な情報発信が欠かせない。また、秋以降には全国百貨店にも店舗を展開していく予定となっているが、そのときにプロモーション映像とECが密接につながっているシネマコマースと、オフラインショップを両立させる工夫も必要になるだろう。バーバリー後には苦戦が続き、よくもわるくもモノづくりの会社、マーケティングが弱いといわれた三陽商会が、このCAST:の立ち上げと成長を通じてどのような転換を果たすのか、注目していきたい。