リテールテインメントという考え方は一応覚えておこう

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「今後は機能的な買い物と娯楽的な買い物との違いがさらに大きくなるだろう。機能性ではアマゾンと肩を並べられるはずもなく、それならばライバル企業は娯楽的要素に重点を置くしかない。現代の小売ビジネスでの勝利とは、アマゾンにできないことで抜きん出ることであり、つまりは、商品ではなく体験やサービス、専門知識に大きな重点を置くことを意味するのだ」ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツ

ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツamazon「帝国」との共存という本の中に
「WACD(アマゾンにできないこと)という言葉が紹介されている。”WHAT AMAZON CAN’T DO” を考えなければ、小売業での生き残りが難しくなっている。

最近では小売業や店舗の再定義がなされている。アップルのシニアバイスプレジデントのアンジェラ・アーレンツ氏は、今後全てのアップルストアを「タウンスクエア」と呼ぶことにした。アップルは顧客との関係をより深化させるため、店舗でのコミュニケーションを重視している。 固定式の椅子をやめ、可動式の木の椅子を使うことで、よりカジュアルに顧客とコミュニケーションできる空間を目指した。アップルはプロダクトを売る場ではなく、店舗を体験の場に再設計したのだ。

サイクリング用品販売チェーンのRaphaは店舗を「クラブハウス」と呼び、顧客とのコミュニティスペースにしている。自転車製品だけでなく、コーヒーや食事を提供することで、自転車好きの出会いの場を提供したのだ。世界中の活気あふれる自転車の都市にクラブハウスを開くことで、自転車好きを虜にすることに成功した。

小売業はただ物を売るだけでなく、体験的小売というコンセプトでアマゾンとの戦いで勝利を目指している。この「リテールテインメント」という動きは日本でも加速している。MUJIが銀座にホテルをオープンしたのも、体験を重視したからだ。MUJIホテル銀座は並木通りの10階建てのビルの6~10階で、地下1階~地上5階には「無印良品銀座」が、地下1階にはレストラン「MUJI Diner」が入居している。

ホテルと店舗が合体することで、MUJIのマットレスや家具、シャンプー、お茶などをホテルの中で体験できるようになっている。MUJIのブランドのコンセプトをホテルで体験することで、ファンを増やせる。当然、滞在客は店舗で買い物をするし、製品へのフィードバックを受けられる。このMUJIホテルは深圳や北京にも進出しているが、今後MUJIのグローバル展開で重要な役割を担っていくはずだ。

同じような動きが海外でも進んでいる。イギリスのデパートJOHN LEWISは、店舗内のアパートに買い物客が宿泊できるようにした。アメリカの家庭用家具店のWest Elmは、MUJIと同じようにホテル経営にまで手を広げ、体験を新たな売りにしている。家具や雑貨点が顧客と自社ブランドをつなげる新たな接点をオープンしているのだ。

店舗はもはや商品を購入するためだけの場所ではない。ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツは「小売は、人々がデジタル機器を放棄してでも体験したいと思わせるものを提供し、コミュニティやレジャーをうまく活用する必要がある」と述べている。

アップルのアンジェラ・アーレンツは「人々は今までにないほどデジタルでつながっているというのに、多くの人々がより強い孤独を感じるようになっている」と言い、顧客はつながりを生み出すべきだと指摘する。閉じた空間に閉じこもる顧客は「リテールテインメント」を求めているのだ。

アマゾンでの買い物体験は、実利的でしかないと言う欠点がある。実店舗はもっとこれを意識し、店舗を体験型にシフトさせることで、顧客との絆を強められるのだ。店舗は、ただ単に商品を買うだけの場所ではなく、食事や、遊び、出会い、仕事やリラックスする場所に進化していくだろう。

店舗はただ単にものを売るだけでなく、生活者のライフスタイルの一部になることを目指すべきだ。MUJIが顧客に買い物体験だけでなく、宿泊や食事を提供し、つながりを強化していることが参考になるはずだ。

実店舗を出会いや学びの場所に変えることで、買い物を楽しみたい顧客を引き寄せることができるようになる。”WHAT AMAZON CAN’T DO” を考え、顧客とつながり、顧客を喜ばす店舗が今後生き残っていくはずだ。