脱タピ行列を実現したのはSIerではなくサラダ屋だった

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ついにタピオカミルクティーもモバイルオーダーが可能になった。2019年7月3日、春水堂グループのTP TEAは、一部店舗でモバイルオーダーサービス「スマタピ」をスタートすると発表した。TP TEAには、79種類のドリンクがあるが、そのうち55種類がスマタピに対応している(7月7日現在)。TP TEAでは砂糖と氷の量を指定できるが、スマタピでも可能だ。

モバイルオーダーには、クリスプサラダワークスのようにオリジナルアプリを使ったり、TOUCH-TO-GO COFFEEのようにLINEを使ったりするなど、いくつかの方法があるが、スマタピはウェブサイトだけで行う。そのため、特定のアプリのインストールは不要。ウェブサイトに訪問して電話番号を登録すると、認証番号がSMSで送られてくるので、それを使ってログインし、注文する。ウェブサイトでは商品の選択やカスタマイズはもちろん、クレジットカードを登録して事前に決済まで行うため、予約した時間に店舗を訪れたら、行列をスキップして受け取り口でスマートフォンで予約画面を見せるだけで、商品を受け取ることができる。

店舗を訪れると、若い女性が列をなしていたが、モバイルオーダーであれば、これをスキップできる。
予約した時間に店舗を訪れると、若い女性が列をなしていたが、スマタピであれば、この行列をスキップできる。

オリジナルアプリが不要なために、利用するうえでのハードルは低く、SMS認証のためにパスワード忘れの恐れもない。一般的に飲食店はスイッチングコストが極めて低く、注文するまでが面倒だったり、パスワードを再発行しないと使えない状況になれば、すぐに他店に流れてしまう。そのようなことがないよう、システム側の都合を押し付けることなく、できるだけユーザーに寄り添っており、外食に適した設計だと感じた。ただ、一点だけ課題を挙げると「注文完了」「調理完了」などの店からの通知が、ログイン後に登録するメールアドレス宛のメールになる点だ。世代によっては、メールアドレスを持っていなかったり、まったく使っていなかったりする可能性があるため、異なる手法を検討するほうがよいかもしれない。

このスマタピのシステムは、TP TEAオリジナルではなく、株式会社カチリが提供するモバイルオーダーのプラットフォームサービス「PLATFORM」を使っている。同社の代表取締役 宮野浩史氏は、モバイルオーダーやキャッシュレスで新たな顧客体験と、店舗スタッフの負荷軽減を実現していることで有名な、前述のクリスプサラダワークスの代表取締役でもある。いわれてみれば、クリスプサラダワークスのアプリに似た注文フローになっている。店舗が操作するバックヤードも含め、そこでの知見が反映されたサービスになっているのだろう。

事業者が自分たちがほしいサービスを開発し、それを他社にも提供するのは、豚組から生まれた飲食店向け予約管理/顧客台帳サービスのトレタ、陣屋から生まれた旅館・ホテル向け管理サービスの陣屋コネクトなどと同じだ。IoTやAI、様々なスマートデバイスが一般的になることで、現場に合わせたサービス開発が容易になり、事業者によるITを活用した自己解決と、現場での活用による洗練化、そしてプラットフォームとなって水平展開する事例が増えてきた。企業の将来にとってトップの情報技術へのリテラシーが大きなファクターとなるのは、IT業界に限らないことを示す好例だ。OMO(Online Merges Offline)を推し進めていくのは、いま情報産業と呼ばれている業界ではなく、そこからは縁遠く、しかし現場を知り尽くしたところにポジションする人々なのだろう。

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