「日本の地域別将来推計人口」の悲観的見通しはIoTとAIの大きなチャンス

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調べ物をしていて、おもしろい資料を見つけた。昨年3月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した、『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』である。
同研究所は、日本の将来人口を推計する公的研究機関で、人口に関する様々な調査研究を行っている。有名なところでは「人口ピラミッド」というグラフを描いているのは、この機関だ。今回見つけた「日本の地域別将来推計人口」も、読んで字の如くで、将来人口を地域別(都道府県別)に推計してみましょう、というものである。

そんなもの、日本中どこでも減っていくのは明らかだし、減少幅も東京は小さくて田舎は大きいというだけではないか。そんなふうに思われるかもしれない。確かに、地域別の総人口で見れば、(それとてファクトとして重要ではあるのだが)その程度の話かもしれない。目を引いたのは、都道府県別の65歳以上人口の割合である。百聞は一見にしかずなので、まずは図を見ていただきたい。

ご覧の通り、2015年時点でもすでに東北地方では半分程度の県が30%近い水準に達しているが、これが2030年には40%弱(一部は40%以上)に達する道府県が全国で半分程度。さらに2045年時点では、40%以上の道府県が半分近くに達する。それこそ東京とて、30%以上が65歳以上で占められる。

この図を眺めながら、まず考えたのは、「2030年に救急車は足りるのだろうか」ということである。最近の高齢者は健康で体力もある方が増えてはいるのだが、それでも65歳以上となれば、怪我も含めて何があってもおかしくないのが自然の摂理である。だとしたら、40%近くが65歳以上の道府県で、救急車の出動要請が増える一方であることは、容易に想像できる。

しかし救急車は、まず単純に高額だという問題があって、おいそれと増やすことはできない。そして使う時は限定的である一方、たとえば「週が明ける月曜日の朝」のように利用が集中しがちである。さらに地域によっては県の面積が広く、住民も分散して生活していることから、救急車を1-2台増やしたところで事態は改善されない場合もある(もちろんそうであっても支援はされるべきだとは思うが)。

だとしたら、こうした問題の解決策として、「そもそも救急車を呼ばなくていい社会」を作り出すことが期待されているはず。つまり、救急車を呼ばなければならない緊急事態が訪れる直前に、なんとか状況を抑制するための取組があるべきだと考えている。

読者各位は、もうお気づきかもしれない。人口減少と高齢化が同時に進む中で、必要なのは救急車を増やすことではなく、IoT(センサー)とAI(機械学習ベースの予測エンジン)による「予測前提社会」を作り出すことだということを。そして支える側の人間には、高度な医療知識ではなく、「あと5分早く対処できていれば」という後悔に陥らないような、「予測に基づく正しい初動」が求められていることを。

ではその「あと5分早く」をどうやって見つければいいのか。たとえば宅内の人間の動きを連続的にモニタリングするシステムかもしれないし、どんなコミュニケーションをしているかを把握するようなシステムかもしれない。そうしたシステムから発せられるアラートを元に、周囲にいる人がしばし注意深く観察することで、もしかすると「救急車を呼ばなければならない事態」が大きく減るのではないか。

このように考えると、「日本の地域別将来推計人口」で見えてくるのは、少なくともIoTやAIシステムを手がける人たちにとっては、大きな商機を感じさせる可能性である。あるいはむしろそうした予測システムは、もはや地域へ貢献するための半ば義務的な存在になるのかもしれない。未来の動態は、誰にも見通せない。「日本の地域別将来推計人口」も、唯一無二の正解が描かれているというわけではなく、むしろ蓋然性の高い予測が書かれているだけである。ただ、大きなトレンドとそれが需要が発生する場所が見えていれば、いつでも「商売」できそうな、そんな気がするのである。