RaspberryPi 4が新登場。エッジAIとIoTの覇権争いは続く

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6月24日(日本時間)RaspberryPi 4のリリースが発表された。というか、いきなり発売である。当初は2020年まで新バージョンは無い、とのアナウンスもあった筈なのだが、いきなりの市場投入である。これにはGASKETもさすがにちょっと面喰らってしまった。

ワンボードPC(シングルボードコンピュータ)では絶対的なシェアを持つRaspberryPiが、かつてこれほどの“焦った”リリースはしたことが無いし、利益を出すのが目的ではないというRaspberry財団のスタンスからすると異例というか、おそらく初めての出来事ではないだろうか。バージョン4の詳細スペックに関しては、あえてここでは言及しない。搭載SDRAM容量の増加を除いては正常進化だからである。このSDRAMの増量は重要ポイントなので詳しくは後述する。

Raspberry Pi 4

Raspberry財団を加速(焦燥?)させた要因は幾つか考えられるが、やはりエッジAI分野での市場からの強烈なリクエストだろうと考えられる。

もちろん過去に打倒RaspberryPiの狼煙が上がらなかったわけではない。ASUSのTinkerBoardはRaspberryPiのライバル最右翼に位置し、CPU性能やGPU性能で実名こそ出していないが誰が見ても、RaspberryPiと比較しているとわかるチャートまで公表し、その優位性を謳った。しかし、IoT的な立場からのアプローチだけでエッジAIでの優位性を謳うことはできなかった。特にIntelのMovidiusが正式サポートされていない以上(自力で移植は可能ではある。2019年6月現在)、実用速度でのエッジAIアプリケーションではどのみち、Movidius+RaspberryPiに勝てないからである。もちろんAIアプリケーションではなく、それなりのCPU性能を要求するIoT分野が無いとは言えないだろうが、RaspberryPiで使い物にならなくて、TinkerBoardならバッチリ!、なんてことは正直、そもそものシステム設計がおかしい。

しかし、エッジAIが認知され(むしろ、エッジAIでやらないといけない、という現場の要求の方が先かも知れない)、単体でのAIファンクションの高性能化が要求されると話が変わってきた。NVIDIAのJetsonファミリーである。さらにエッジAI向けのモデルとしてJetson nanoが2019年3月にリリースされた。コアモジュールは99ドル(こちらは普通の人はそのままで使えない)。実用モデルでも129ドルである。(実用ではこちらが本命)
ざっと特徴を挙げると、

・GPU: 128 基のコアを搭載した、NVIDIA Maxwell アーキテクチャをベースとした GPU
・CPU: Quad-core ARM A57
・ビデオ: 4K @ 30 fps (H.264/H.265) / 4K @ 60 fps (H.264/H.265) でのエンコードおよびデコード
・カメラ: MIPI CSI-2 DPHY レーン、12x (モジュール) および 1x (開発者キット)
・メモリ: 4 GB 64 ビット LPDDR4、25.6 ギガバイト/秒
・ギガビット イーサネット
・対応OS: Linux for Tegra
・デベロッパーキットのサイズ: 100mm x 80m

NVIDIAは全世界のホビイストやクリエイター3000万人が、このボードにより、エッジAI開発での恩恵を受けられると豪語(失礼!)している。
GASKETでもJetson nanoを評価中だが、確かにそのパフォーマンスは想像を絶する。(価格、サイズ、その他を考慮して) 実際、このボードはもの凄い勢いで売れているとある関係筋から聞いた。

さて、一方RaspberryPi陣営はどうするのか?

少し話が飛ぶが、日本にIdeinというベンチャーが存在する。彼らは高度な技術を保有し、RaspberryPiのGPUをAIでの演算ユニットとして利用し、通常の50倍の演算速度でAIアプリケーションを実行できるというモジュールを提供している。この技術レベルは世界レベルのものである。多くの企業が彼らに期待を寄せている今、最も旬なベンチャーのひとつである。彼らは外付けのモジュールなしに、RaspberryPiでのエッジAIの可能性を大きく広げている。間違いなく彼らは一定のポジションを捕まえていくだろう。

ここで、先述したRaspberryPi 4のメモリの問題が重要になってくる。

学習モデルがどんどん肥大化するようになり、RaspberryPiが従来の1GByteのSDRAMでは足りなくなってきているのである。演算の実用速度が出ても、学習モデルを展開できるメモリがないのであればどうにもならない。そこでRaspberryPi 4では複数のメモリモデルを展開し、最大4GByteのモデルを用意した。通常のIoTアプリケーションでこのメモリは必要ない。つまり、エッジAIアプリケーションがこのメモリを要求したのだとGASKETは考えるのだ。これはRaspberryPiでのエッジAIプロジェクトにとってかなりの朗報である。

一方、Jetson nanoは最大パフォーマンスで動作させると、5V4Aという電源を要求する。エッジAIのハードウェアの立場からすると、あり得ない要求なのである。これはACアダプタレベルでは対応しにくい電流容量であり、CPUやGPUの消費電力はイコールそのまま発熱であるので、20Wのヒーターとほとんど同じなのである。

果たして過酷な環境下でこの発熱の塊とも言えるエッジデバイスを安定動作するシステムとして提供できるのか? 少なくともスマートな解決法は今現在提供されていないと思う。クルマに例えるならば強力なエンジンだけどんどんリリースされ、タイヤやボディ、さらに言うならばドライバーの運転技術は知りません、という状況なのだ。

当面、エッジAIの覇権争いは続くと思われるが、おそらく安定稼働とエッジAIの処理速度やビジネスモデルの構築の仕方でデバイス選択が大きく左右されることになるだろう。これらを見極め、最適なソリューションをデザインして、提供できるか、否か。テクノロジーの進化が作る“溝”は新たな課題とビジネスチャンスを産むだろう。

Jetson nano デモ動画

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