外食産業の働き方改革とおもてなしを両立させる ロイヤルグループの研究開発店舗

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東京・馬喰横山にあるGATHERING TABLE PANTRY(ギャザリング テーブル パントリー)は、「ロイヤルホスト」や「てんや」などを運営するロイヤルグループが、生産性向上や働き方改革を目的に「研究開発店舗」としてオープンしたレストランだ。

タブレットを使ったセルフオーダーシステム、完全キャッシュレス、セントラルキッチンを活用した油や火を使わないコンパクトなキッチンなどによって、スタッフを現金管理や本部への報告業務から開放するとともに、清掃、ゴミ出しの手間の軽減や、キッチンをコンパクトにすることによる席数確保など、様々な工夫がなされている。人口が減少するなかでの外食産業の危機感とともに、新しいソリューションを積極的に導入して解決していこうとの意欲が見られる。

入り口にはキャッシュレスを示す看板が掲げられている。支払い方法は、クレジットカードやSuicaなどのICカードのほか、LINE PayやPayPayなどのQRコードを使ったペイメントサービスにも対応している。店に入ると、口頭でもキャッシュレス店鋪であることについて確認を取られる。

店内はスッキリとした内装となっており、様々なグループに対応するためか、大きなテーブルを使っている。これもテーブルを移動させて人数に合わせてレイアウトを調整する手間を減らすとともに、楽に清掃するための工夫と思われる。席につくと、スタッフがメニューを表示しているiPadを持ってくる。これを使って注文や決済を行う。

スッキリとした店内。ペーパレスで大きなテーブルを使うことで、さまざまなグループが来てもテーブルを移動させることなく対応できるほか、掃除もしやすくなっている。
スッキリとした店内。ペーパレスで大きなテーブルを使うことで、さまざまなグループが来てもテーブルを移動させることなく対応できるほか、掃除もしやすくなっている。
注文や決済を行うためのタブレット。
席に着くと注文や決済を行うためのiPadをもってきてくれる。

iPadで注文するとスタッフのAppleWatchに通知され、キッチンのiPadにテーブル番号と注文内容が表示される。ここでも工夫があり、ドリンクの注文はビールサーバ前のiPadに、フードの注文は、調理器具が並ぶ棚にあるiPadに表示され、それを見てそれぞれの担当が手配する。そのため、スタッフ間でも指示や確認の声掛けが行われない。また、専用機材ではなく汎用品のiPadをケースをつけることもなく使えるのは、油汚れがないキッチンのメリットのひとつかもしれない。

ビールサーバ前にあるタブレット。ドリンクの注文が入ると、ここに注文内容とテーブル番号が表示される。
ビールサーバ前にあるタブレット。ドリンクの注文が入ると、ここに注文内容とテーブル番号が表示される。
フードの注文は、調理器具そばにあるタブレットに表示される。油汚れの恐れがないため、iPadがケーシングされることもなく調理器具に並んで設置されている。
フードの注文は、調理器具そばにあるタブレットに表示される。油汚れがないため、iPadやモニターがケーシングされることもなく調理器具に並んで設置されている。

コンロはないがオーブンはあるため、焼き目がついたメニューもある。調理の制限はあるのだろうが、サラダやカルパッチョなどの生鮮もあれば、焼き物もあり、物足りなさは感じなかった。良くも悪くも、ファミレスだ。

いわゆるレンチンだけでなく、オーブンを使った料理もある。
いわゆるレンチンだけでなく、オーブンを使った料理もある。

この店では、セントラルキッチンを全面にアピールしており、店舗内のサイネージでセントラルキッチンのPR動画が放映されている。単なる効率化ではなく、セントラルキッチンのメリットを客にも理解してもらおうとしている。

店内にはサイネージが2面設置されており、セントラルキッチンをアピールする動画が放映されている。
店内にはサイネージが2面設置されており、セントラルキッチンをアピールする動画が放映されている。

デジタルサイネージで放映されている動画は、Youtubeで見ることもできる。

さらには、入り口付近には冷凍庫「FROZEN SHOP」が置かれ、このレストランで使われている冷凍食品がそのまま売られている。この冷凍食品を使えば、家庭でも店と同じものが食べられる。

レンジで温めるだけの調理を嫌がる人も少なくないうえ、一方で「原価率」「コスパ」と言われがちな外食産業において、ここまで冷凍食品を使っていることを前面に出すのは珍しい。しかし、SNSですべてが晒されるリスクのある現代において、中途半端に隠すことは「炎上」を招きかねない。それよりも、取り組みをオープンにしてメリットを顧客に還元しつつ理解を得るこの店のやり方のほうが、店と客の双方にとってハッピーだと感じた。

レストランのメニューの多くが冷凍食品として売られている。冷凍食品の試食ができるレストラン、という見方もありえるかもしれない。。。
レストランのメニューの多くが冷凍食品として売られている。冷凍食品の試食ができるレストラン、という見方もありえるかもしれない。。。

今回、筆者はLINE Payを使って決済をした。クレジットカードや交通系ICカードを使うには、スタッフに楽天ペイの端末をテーブルに持ってきてもらう必要がある。しかし、LINE PayやPayPayなどのQRコードを使ったペイメントサービスであれば、注文用端末のiPadで自分のQRコードを認識させるだけで、スタッフを呼ぶ必要もない。客のタイミングで勝手に支払いを済ませられる。

クレジットカードや電子マネーの場合は、店員を呼び出して楽天ペイ端末を持ってきてもらうが、QRコード決済はその必要もない。
クレジットカードや電子マネーの場合は、店員を呼び出して楽天ペイ端末を持ってきてもらうが、QRコード決済はその必要もない。
QRコード決済であれば、注文用端末のiPadがそのまま決済端末になる。決済サービスを選択すると、フロント側のカメラが起動するため、自分のスマホにQRコードを表示して読み込ませる。
QRコード決済であれば、注文用端末のiPadがそのまま決済端末になる。利用する決済サービスを選択すると、フロント側のカメラが起動するため、自分のスマホにQRコードを表示して読み込ませる。

決済を終えるとホールスタッフに即座に通知が飛ぶようだ。一斉に「ありがとうございました」との声が上がり、ホールスタッフのひとりが送りのためにテーブルまで来た。ここはとても重要なポイントだ。レストランで完全セルフ決済を採用すると、気づかないうちに帰ってしまって声がけのタイミングを逸してしまったり、片付けが遅れてしまったりする可能性がある。スタッフの負荷を軽減するためには、タッチポイントを減らして無駄を削減しなければならない。しかし、失ってはならないタッチポイントは、逸しないための仕組みが必要になる。食券制の牛丼屋であれば、食べ終えれば勝手に帰ってもらっても構わないが、この店では、そうは考えなかったのだろう。考えれば当たり前の話ではあるが、新鮮な体験だった。

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