来たぞ!我らのドルビーシネマ!

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ドルビーシネマがさいたま新都心のMOVIXさいたまに誕生した。2018年に登場とされていたが、延期に延期を重ね、満を持して4月26日(金)にOPENした。日本には既にT・ジョイ博多が導入しているが、関東に住む映画(館)ファンにとってはなかなか行きづらく、待望の関東初・本州初の導入である。

システムについては様々なメディアや公式WEBにも載っているので、GASKETの読者であればご存知の方も多いだろう。AVWatchに詳しい記事が書いてある。同じ映画をドルビーシネマと通常のスクリーンとで見比べてきたので、レビューしたいと思う。

デモンストレーション映像だけで課金の価値あり

ドルビーシネマは2台のプロジェクターを使った最先端の光学・映像処理技術を採用したDolby Visionと、様々なスピーカーを用いた最新シネマ音響施設Dolby Atmosの音響効果が大きな特徴だ。通常だと10分以上流れる予告映像もそこそこに(2本しか流さないのは驚いた)、この特徴を紹介するデモンストレーション映像が5分ほど流れる。この映像がとにかくわかりやすい。わかりやすくかつ凄い。今までIMAX、Dolby Atomos、4DX、MX4D、THXと様々なデモンストレーション映像を見てきたが、効果の説明とその効果がいかに映画に直結しているかを示した映像は、これが群を抜いているように思う。

デモ映像で素晴らしい点は、様々な方がレビューやTwitterでも書かれているが、黒の「漆黒さ」の表現だ。黒い背景に白い丸が投影され、普段の映画のスクリーンで観ている黒とドルビーシネマで表現される黒が比較されるのだが、ドルビーシネマは驚くほどの黒さである。まさに漆黒。既に予告が始まる前の暗転で目の前が文字通り真っ暗になり、スクリーン以外の視界は完璧な闇に染まるのだが、スクリーンの黒と視界の黒が全く同じで、スクリーンに浮かぶ物体は浮いているようにみえる。シートも光を吸収する素材を使っており、床や天井も光を反射しない。視界と映像の黒が地続きの黒で、視界と映像の境界線がなくなる。これは新しい体験だった。

通常の映画館では7ch程度の音響も、Dolby Atmosなら77ch以上という話で、前から後ろから横からはもちろん、上からも音が飛んでくる。凄まじい臨場感だ。
ドルビーシネマは通常+500円。3Dだと+900円だ。「このデモンストレーション映像だけでお腹いっぱいと言われる方がとても多いんですよ」、とMOVIXさいたまの方も仰っていたが、このデモ映像を見て体験するだけでも課金する価値はある。普段の生活では体験出来ない「闇」だ。

ハリウッド映画「名探偵ピカチュウ」を見比べてみた

では実際に映画はどうか。筆者がみたのは3D版の「名探偵ピカチュウ」。選択肢として他に、3時間の上映時間を誇る「アベンジャーズ/エンドゲーム」と邦画の「轢き逃げ」があったのだが、3時間は辛いし折角ならハリウッド映画を観たい…ということで名探偵ピカチュウにした。だが、これがなかなかどうしてドルビーシネマ向きのコンテンツであった。

デモ映像でも紹介した、漆黒さ。つまりこれは映像のコントラストが通常よりもハッキリしていて、繊細な表現が可能となっている。実写版ポケモンということで3Dモデリングの様々なポケモンが出てくるのだが、ピカチュウの毛並みのモフモフ感はもちろんの事、ピカチュウのお腹の部分の微妙な白さや鮮やかな黄色さ、舌が長くてテラテラしているポケモン(ベロリンガ)のヌルヌル加減や三白眼のアヒルのようなポケモン(コダック)の瞳孔、恐竜のようなポケモン(リザードン)の鱗の固そうな触感などの表現が実によく再現されていて、通常のスクリーンと見比べるとその違いは歴然だ。特にピカチュウが時折見せる白目がいい。

本作はハリウッド映画なので、とにかくド派手である。まずお約束通り冒頭で工場が爆発する。3Dなのでその迫力は凄まじいのだが、それに拍車をかけるのDolby Atmosの音響。通常の音響だと再現されない天井から座席に向けてのスピーカーが確実に体感する音圧を上げており、視覚と聴覚で工場の爆発を体験出来る。そうなってくると、なぜ私は爆風を感じていないのか、火薬の臭いがしないのか、と脳が混乱する。その場にいるように錯覚しているのに、爆風がない事に違和感を覚えていた。それほどまでに臨場感がある。

Dolby Atmosは四方八方から音が飛んでくるのが魅力の一つだが、本作ではドーム状のスタジアムが登場する。クラブのように大音量がかかるシーンなのだが、これもまたすごい。Dolby Atmosにおあつらえ向きのシーンだ。音が後ろから上から飛んできて、思わず身体が避ける動作をしてしまう程に立体音響である。すごい。すごく疲れる。

作中は暗闇のシーンもとても多い。夜のシーンや、駐車場のシーンや、廃工場の中。ドルビーシネマで観た後に通常のスクリーンでみると、黒ってこんなに白かったっけ?と思ってしまうことだろう。ピカチュウと主人公ティムが夜の公園で話すシーンは、その場にいて端から二人を見守るような気さえしてくる。コントラストがハッキリしているため、もちろん黒以外にも空の色や街の細かな色が肉眼で見ているような色になる。これは感動した。

ポケモンが列をなして通り過ぎていくときは本当に横を通り過ぎていくようだったし、凄まじい臨場感を感じることが出来た。見終わってしばらくしたら非常に疲れていたのがその証拠だろう。音響が良いことで有名なイオンシネマズ幕張新都心のDolby Atmosで観た、岩浪音響監督調整版のスパイダーマン・スパイダーバースよりどっと疲れていた。3D疲れと、上から飛んでくる音のせいかもしれない。

ぜひ宇宙映画を

ドルビーシネマを観た人なら、次は絶対宇宙映画を観たくなることだろう。もしくは、絶対に観たくないかもしれない。どうしても宇宙の「闇」を連想せざるを得ず、ゼロ・グラビティなんて見たら絶対に楽しく、下手するとトラウマになってしまうかもしれない。スクリーンに映される宇宙の闇と、今自分たちが観ているスクリーン以外の視界も闇なので、あたかも自分が宇宙にいるような没入感が体験ができるだろう。息をしていることが不思議な位に。

この高コントラストな映像を画面いっぱいに観られたらもっと没入感が出るだろう。あるいは、全編黒背景で、その場に浮き上がっているようなコンテンツが作られたらもっと面白いかもしれない。前述の宇宙のように、デモ映像の黒地に白い球が浮かんでいるように、黒を活かしたコンテンツだとまた新しい映像表現が、より没入感のある映画体験ができるのではないか。ともすると暗い映像はつまらなかったり眠くなったりすることがあるが、ドルビーシネマは目が覚めるような新しい可能性を感じさせた。

2019年秋には東京の丸の内ピカデリーにも登場予定のドルビーシネマ。気になる方は、ぜひさいたま新都心でも体験してみて欲しい。