QRコードで買い物難民を減らす

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筆者のオフィスはオフィスグリコを導入していないこともあって伝聞になってしまうのだが、最近のオフィスグリコはPayPayが使えるようになったらしい。

ご存知だとは思うが、一応ご紹介すると、オフィスグリコとはオフィスを対象とした置き菓子サービスだ。引き出しや冷蔵庫に100円均一のお菓子や飲み物などの商品が入っており、購入するときには商品と引き換えに、棚にくっついているカエルの貯金箱に100円玉を入れる。決済に電気も通信も使わないため、スペースさえあれば、どこにでも棚を設置できるため、導入するうえでのハードルが非常に低い。現在は、関東圏と関西圏を中心にサービスを展開している。もしかすると、PayPayの導入によって、このサービス提供範囲が広がるかもしれない。

オフィスグリコの象徴ともいえる「カエルの貯金箱」による支払いは、自販機やFelicaのような方法に比べるとタダみたいなものに見える。お菓子の補充のためにスタッフが巡回するとき、そのついでに回収すればいいだけだ。ところが、スタッフにとってはそれなりの負担となっており、それが労務費にも影響しているという。例えば、回収の都度に小銭を数えなければならない。お店での会計のようにお客とのやり取りがあれば、自然とダブルチェックが行われるのだが、ひとりだとそうはいかない。黙々とした作業で金額を数えるのは、なかなか神経を使う。また、回収後の小銭は、スタッフが常に持ち歩くことになる。いくつものオフィスをまわってお菓子や飲料の補充をしていくのだが、その都度に小銭も積もり積もってそれなりに重くなる。このように、物品の補充業務のついでに行える作業だとしても、現金の存在はスタッフにとって負担なのだ。そこに今回のPayPayである。もしすべての決済がこのようなペイメントサービスで行われるようになればどうだろうか。決済手数料は必要になるだろうが、それは売上に比例した変動費だ。これで労務費を圧縮できれば、事業は身軽になる。また、リアルタイムに決済情報を得られるようになれば、どの商品が購入されたかはわからなくても、そのオフィスでの利用状況はわかり、商品補充を効率化するうえで参考情報になる。支出を変動費化し、スタッフのローテーションが効率的になれば、これまでは収益化が難しかったエリアにも進出できるようになるだろう。

これまでは、流通業者が物流だけでなく決済インフラも用意するのが当たり前だった。レジやFelicaリーダー、それを支える通信インフラや電気などすべてだ。ところが、PayPayのようなペイメントサービスになると、流通業者はQRコードのシールを印刷して貼り付けておくだけで、その負担は大きく軽減される。流通業の損益分岐点が改善できれば、スモールマーケットにも進出できるようになり、より多くのひとびとにモノを届けられるようになる。必要物資の購入さえも困難な「買い物難民」が社会問題化している日本にとって、流通の負担が小さくなることは、望ましい流れだ。

その一方で、消費者がスマートフォンの購入やその通信費などを負担しなければならないことで、これを負担できない消費者に対して差別的なものになってしまう、との懸念が出ている。アメリカでは、キャッシュレス店鋪を禁止している動きがでているらしい。

レジレスで自動のAmazon Goの問題点は、商品を購入する際に、Amazonアカウントに紐付けられた銀行口座かクレジットカードが必要であること。

これは、現金での支払うことの多い、銀行口座を持っていなかったり銀行の残高が不足しているユーザーに対して差別的となる可能性がある。

TeckCrunch:米で進む「キャッシュレス禁止」の動き、Amazon Goで現金が使えるようになる

問題意識としては理解できる。しかし、流通業者がレジやFelicaリーダーを用意する場合でも、そのコストは購買を通じて消費者が負担している。間接的か、直接的かの違いでしかない。しかも、銀行ATMなどの現金を流通させるためのインフラ整備も含めて考えれば、社会全体のコストは現金決済よりも電子的な決済のほうが小さい。過疎化が進んだ地域では、現金を強制するほうが流通業の損益分岐点を上げて撤退の呼び水となり、買い物難民を増やしかねない。流通に現金決済を強制させて、そこで生まれた買い物難民に助成を行うよりも、ペイメントサービスを使うための環境整備に助成を行い、できるだけ流通を維持できるようにした方が、社会全体の負担を抑えられるのではないか。

一部のコンビニエンスストアでは、24時間営業は店舗オーナーの負担が重すぎるとして耳目を集め、営業時間を短縮する実験が始まったように、流通の制度疲労が出始めている。そしてこれらの問題は、少子高齢化や過疎化によってさらに拍車がかかっていく。旧来の手法を墨守するのではなく、新しい技術の活用や、そのコスト負担のあり方について改めて考えるべきときではないだろうか。

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