いつまでAmazon Goを「無人レジ」「無人店舗」と紹介し続けるのか

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Amazon Goが誕生してから、日本国内でも「次世代型店舗」の話題が尽きない。小売り業やシステムベンダーが、そこをにらんだ展開を見せている。

2019年2月には、駅での無人決済店舗の事業化に向け、JR東日本スタートアップ(株)とサインポスト(株)の2社で合弁会社を設立すると発表した。両社は、2017年にJR大宮駅、2018年にJR赤羽駅ホーム上で無人キオスク店舗の実証実験を行うなど、無人店舗の実現に向けての実験を重ねてきたが、本格的な展開に向けて一歩先に進めた形になる。

また、2019年4月2日には、パナソニックの子会社のパナソニック システムソリューションズ ジャパン(株)が、100%子会社のストアビジネスソリューションズ(株)を設立し、ファミリーマートとフランチャイズ契約を締結して実験店舗「ファミリーマート佐江戸店」をオープンした。パナソニックはシステムベンダーとしての立場だけでなく、自ら店舗運営も行って次世代型コンビニの実現に向けて進めることになる。

次世代のリテールに向けた動きが活発化するのは、生活者のひとりとして喜ばしい。便利な世の中を実現していってもらいたいと思う。ただ、気になるのは、このような動きのほとんどが、無人店舗、無人コンビニと報じられていることだ。上記2つの案件も、流通の課題は人手不足であり、それの解決策としての取り組みとされている。

JR東日本スタートアップの社員と話す機会があったため、なぜサインポスト社との合弁会社を設立するのか質問したところ、「労務費を抑えないと乗降客数が中途な駅にキオスクを展開できない。無人店舗ならば、キオスクを設置できる駅が増え、利用者の利便性を高められる」との回答だったし、ファミリーマートの沢田社長も、佐江戸店のオープン時の記者会見では、労働力不足だから技術革新が必要だと報道陣に答えている。

2日に記者会見したファミリーマートの沢田貴司社長は「労働力不足の問題などが取り沙汰されている。技術革新は待ったなしで進めていかなくてはいけない」と話した。

ファミマが次世代コンビニ、パナソニックと

確かに、超高齢化社会の進行で労働力不足はさらに厳しくなる一方であり、無人化や労働者の負担軽減は急務であることは間違いない。しかし、労務費の削減だけが目的であれば、このような大掛かりなシステムは不要だ。そもそも、各社が一斉に真似を始めたAmazon Goは、レジがないだけで決して無人店舗ではなく、通常の店舗よりも人は多いぐらいだ。ウォークスルーは省人化ソリューションではない。

労務費の削減であれば、すでに自動販売機という優れたソリューションがあり、日本は世界一とも言われる自販機大国である。足の早い商品は取り扱えないと言われてきたが、コンビニエンスストアの流通網を使って商品管理を行う、セブン自販機も出てきている。おにぎりやサンドイッチ、サラダなどの生鮮食料品が日々補充され、ランチなどの軽食には十分に対応できる。

もっとローテクでいえば、野菜の無人販売所やオフィスグリコのように、商品を棚やカゴに置くだけで受け取るのにまったく障害を置かないスタイルもある。QRコードやICカードを使えば、現金の取扱いが不要になるため、展開するうえでの敷居はかなり低い。商品の盗難が心配? 防犯カメラをつけておけば、かなり犯罪率は下げられるし、そもそも「カメラ追跡型無人レジの運営費+取りこぼし被害」と「オフィスグリコ型店舗の運営費+盗難被害」と比較したときに、前者のほうが低コストになるケースがどれだけあるだろうか。有料駐車場でも、フラップ板やゲートなどの障害を設置するよりも、カメラだけを設置するほうが踏み倒しを減らす効果が出ている。もし盗難がそんなにひどいようであれば、撤退すればいいだけだ。店鋪にコストをかけていなければ、サンクコストにとらわれる心配もないだろう。

では、本家本元のAmazon Goや、同様に顔認証とカメラを使った中国の無人コンビニJian24は、なぜカメラを使った店舗を作っているのか。それは、省人化が目的ではないからだ。彼らの目的は、レジのないウォークスルーによって顧客体験を向上させるとともに、オンラインストアでの顧客分析と同様のことをオフラインストアでも実現することにある。オンラインストアであれば、ユーザーがいろいろな商品を見て比べている様子や、カートに入れたり削除したりして迷っている様子をすべて可視化できるが、それと同じことをオフラインストアでも行おうとしている。オンラインとオフラインのチャネルの違いを超え、ユーザーを中心にしたマーケティングのプラットフォームの構築が目的だから、カメラを使っている。設定されている課題がまったく異なる。

無人コンビニの周囲には、「本当にそこに課題があるのだろうか」「本当に課題の解決方法はそれなのだろうか」と思わされることが多い。日本の各社がAmazon Goもどきの店鋪を作っているあいだにAmazonやアリババなどはマーケティングプラットフォームをさらに強力に進化させてプラットフォーマーとしての立場をますます固めてしまうのではないか、そして各社が必死に取り組んでいる省人化は「一方ロシアは鉛筆を使った」的な解法があるのではないか、そう思えてならない。