エッジAIは熟練職人を求めている

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GASKETでも何度か触れているが、エッジAI(クラウドに頼らず、最終端末で機械学習処理、判断を行うこと)のテクノロジーは今年から来年にかけて猛スピードで加速する。特に機械学習の計算を高速化するアクセラレータと呼ばれるハードウェアデバイス(チップ)は覇権争いが進む。これに引きずられるようにハードウェアアクセラレータを利用しなくても高速なアルゴリズムでソフトウェアのみでエッジAIを実現できる技術なども高度化していくと思われる。IoTとエッジAIはある意味分離して考えられてきたがこれらも融合してしまい、ひとつの言葉になっていくだろう。

エッジAIが実用化可能レベルになってきてこういった案件のプロジェクトも増えつつあるのだが、できること、できそうなことが増えるほど“耐環境性”が一番の問題点になってくる。エッジAI、IoTデバイスは基本的に快適オフィスで動作するものではない。クルマや電車などの移動デバイス、屋外での環境測定、工場での利用、小売店、飲食店、などなど、エッジデバイスにとって極めて厳しい耐環境性を求められるのだ。机の上でプログラムは動作するが、現場で安定動作できるのか?

屋外環境だった場合、一番の問題は水と温度だ。防水ケースに実装することが必須となる。するとCPUやデバイスの放熱の問題を引き起こす。結露の問題も解決しなければならない。車載(電車やバスなども含めて)などの場合、振動対策が重要になる。ドローンに搭載したいとなると、水、温度、振動、粉じんなどあらゆる“試練”が待ち受けている。
搭載するセンサーも同様に保護しなければならない。AIプログラムどころではないのである。(もちろん、必須なんだが)

どんなケーシングをすれば良いのか、温度対策、振動対策、機構設計などなどAIやIoTとは直接関係の無い熟練職人の知識や経験が必要になる。最終目標が人のように判断できるAIや人手を減らすIoTなのに、熟練職人を要求するというのも皮肉な話ではある。よくある職人技マッチングサイトなどもこういう観点に注力すると面白いかも知れない。

もうひとつ必要な職人技はアナログ回路や高速信号処理の技術だ。当たり前だがAI,IoTは物理量をデジタル化し前処理する必要がある。それもできるだけリアルタイムでなければいけない。ADコンバータから生データを読み込んで、ソフトウェアでFFT処理なんかしているとまったくもって間に合わないことも多い。例えばFPGAなどでハードウェア的に超高速信号処理する技術なども要求される。超高精度GPSには高度な無線技術が不可欠だ。これらは生半可なエンジニアができる“技”ではない。
AI、IoTの加速は職人技と合体した時に、本当のイノベーションを起こすのだろう。

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