「駅×スタイリング体験」は意欲的だが消化不良気味

Digital Signage/IoT /

3月18日から21日までの期間限定で、品川駅改札内のイベントスペースにて、JR東日本とairClosetのコラボによるスタイリング体験イベントが行われた。

airClosetは2015年にスタートした月額制のファッションレンタルサービスだ。身長や服のサイズなどの基本情報のほか、自分の好みを登録することでプロのスタイリストによってコーディネートされた服が送られてくる。仕事や子育てなどによってファッションに時間が割けなくなった女性にも、より多くの服に出会う体験を提供しようとしている。今回のイベントでは、駅という日常の空間なかで、プロのスタイリストによるコーディネートを体験できる場を作り、本サービスへの誘導を図っている。

airCloset ウェブサイト
airCloset ウェブサイト

400以上の店舗を展開するGUが、オンラインショップでの購買を誘導するために試着専用のオフラインショップGU STYLE STUDIOをオープンさせたり、オンラインファッションモールのZOZOが採寸ボディスーツZOZOSUITEを配布したりと、オンラインとオフラインの垣根をなくしてハイブリッドで購買体験を作ろうとの試みが出てきているが、これも同様の流れだろう。airClosetに入会するうえで感じるハードルは「オンラインで好みやサイズなどを伝えるのは面倒そう」「どの程度のクオリティの服がレンタルされるのかがわからない」「プロのスタイリングというのが、どの程度のものかがわからない」あたりだが、これらのオンラインでは解決が難しいハードルを解決するのが、オフライン接点の役割になると思われる。

品川駅のイベントスペースでは、いくらかの試着用の服と、モニターとカメラが組み込まれたスマートミラー、フィッティングルームが置かれており、スタッフにスタイリングを体験したいことを伝えると、タブレットで好きなカラーパターンなどのアンケートに答えたのち、スマートミラーで表参道のオフィスにいるスタイリストとビデオ通話をしながら、スタイリングを体験できるようになっていた。

ハンガーラックの向こうに見えるのが、姿見にビデオ通話機能を組み合わせたスマートミラー。これを使ってスタイリストと会話する。その奥にあるのがフィッティングルーム。
ハンガーラックの向こうに見えるのが、姿見にビデオ通話機能を組み合わせたスマートミラー。これを使ってスタイリストと会話する。その奥にあるのがフィッティングルーム。
タブレットでの事前アンケートに答えると診断結果がでてきて、これをベースにスタイリストとのビデオ通話でコーディネートが進む。
タブレットでの事前アンケートに答えると診断結果がでてきて、これをベースにスタイリストとのビデオ通話でコーディネートが進む。
上部にモニターが設置されているミラーサイネージ。右手黒色の取っ手のようなものがウェブカメラとなっている。デジタルの機能としては、スタイリストとのビデオ通話ができるのみで、AR試着のような機能はない。
上部にモニターが設置されているミラーサイネージ。右手黒色の取っ手のようなものがウェブカメラとなっている。デジタルの機能としては、スタイリストとのビデオ通話ができるのみで、AR試着のような機能はない。

オフラインの活用との点では、すでにairClosetは、エイブルとの提携でパーソナルスタイリングを体験できる実店舗「airCloset×ABLE」を表参道に1つ持っている。しかし、こちらは仕事帰りや休日のお出かけ前などを想定したコーディネートの場であり、ファッションに対して時間を割ける若い層をターゲットとしている。しかし、airClosetは、もともとは表参道に行くだけの時間がないような、キャリア層や子育て層が改めてファッションを楽しんでもらうために、プロのスタイリストによるコーディネートをオンラインで提供するサービスだ。そのためには、ハレの場である表参道だけでなく、日常的な場所にも接点を設けていく必要があり、あえて駅という場所を選んだのだろう。

しかし、実際にこのイベントを体験してみると、残念ながらこの試みは、あまりうまくいっていないと感じた。まず、このイベントでスタイリング体験をするには、アンケートへの回答を含めて20分程度かかるのだが、慌ただしく移動する人が多い駅のスピード感、時間軸とかなり大きな隔たりがある。品川駅の改札内には商業施設があり、一般的な駅に比べれば滞留時間が長い駅ではあるが、それでも厳しいものがあった。ファッションに対して能動的に活動できなくなった人にリーチするには、無理にでもそのような場でなければ難しいのかもしれない。しかし、駅で20分の時間をもらわないと成立しないこのイベントは、生活者のタイミングを無視している。忙しくしている女性のスキマ時間に使ってもらいたいのであれば、無理やりに接点をねじ込むような展開よりも、家事代行やベビーシッターなどの時間を作るサービスと組み合わせたるなど、生活者に沿った接点のデザインが必要ではないか。

また、今回のイベントで受けたヒアリングや、そこから提案されるスタイリングはイベントだけで完結したものであり、本サービスには引き継がれない。改めて会員登録を行わなければならない。airClosetの服とスタイリングのクオリティに納得できたとしても、ここの面倒が残ってしまうのは、もったいない。オフラインの接点を広げていく前に、オフラインとオンラインの顧客体験をつないでいくことについて、もう少し考慮したほうがよいと感じた。

同社では、さらにコンビニや公共施設などのオフラインに接点を広げていくことを検討しているようだ。直近3年間で売上高が60倍と急速に成長している同社が、どのような展開をしていくのか、引き続き注目したい。