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ダイナミックプライシングはどこまで正義なのか

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ダイナミックプライシング。その名の通り、動的に価格を変動させることである。当初はスーパーのプライスタグを電子ペーパーの表示を切り替えることくらいに思っていたが、あれはスーパー側の省力化に過ぎず、セルフレジと同じで顧客側のメリットはない。

我々がダイナミックプライシングを実際に体験する例の筆頭は航空券だろう。年末年始や大型連休はもちろん、CESのような大きなイベントの時には航空チケットは明らかに高騰する。我々が知らないだけだが、たとえば医学系の学会の時期など、移動が集中する日程では同様なことが起きている。そしてホテル料金もこれとほぼ連動する。これらについては「移動する人が多いから」となんとなく納得感があるだろう。

ところが鉄道の切符は飛行機のようなダイナミックプライシングで変動している感覚は非常に少ない。基本的には鉄道の切符は定価販売が基本だからである。東京ー大阪の飛行機の普通運賃は25,750円だが、大部分の利用者は15,000円くらいの特便割引で利用しており、正規の割引運賃には7,950円という設定まである。一方新幹線の場合は13,620円で、スマートEXを利用しても値引き幅は飛行機に比較すると非常に少ない。「ぷらっとこだま」という商品もあるがこれは所要時間が大きく異なるので同一商品とは言えない。

航空券の価格幅が多い理由は、2000年に航空運賃が自由化されたのが大きい。ここで注意する必要があるのは、必ずしも自由化=値下げではないということだ。その象徴的な事例は国際線における「燃油サーチャージ」で、この変動幅は非常に大きい。鉄道も上限価格制で認可されているので上記のような割引も存在するが、航空券に比較すると変動幅が少ない本当の理由は筆者にはよくわからない。

ダイナミックプライシングはスポーツとエンターテインメントに最も向いている。楽天イーグルスや横浜F・マリノスではすでにダイナミックプライシングを導入している。野球やサッカーはホテルや航空券のように繁忙期や閑散期をあらかじめ予測しにくく、チームの順位や対戦相手、人気選手が出場するか否か、そして曜日や天気などが影響する。スポーツ分野ではパラメーターは少なくても10~20個はあるという。2018年6月に三井物産、ヤフー、ぴあによって設立されたダイナミックプラス株式会社はその専業会社である。

またダイナミックプライシングは高額転売を阻止する効果もある。需要が多いチケットは高額設定することで、本当に観戦したい人だけに流通させるようにする。チケット自体がeチケット化されていれば、販売は入場も非常に効率化されるし、なんといっても何らかの理由で行けなくなった時に興行主に買い戻してもらい、興行主はそれを再販売できる。これらはすべて「適切な価格」をAIが算出することで、収益の最大化を図ることができるはずだ。

こうしたダイナミックプライシングに対して、一方では気になる事例を多く見かけるようになった。宿泊料金が通年で同じという動きである。宿泊施設にも休業日を設定する動きと合わせて、結果的にそこそこの収益をそこそこの従業員で回していくというもの。通年で提供されるサービスが同じであれば、価格も同一であるべきという、ダイナミックプライシングとは全く逆の視点である。この背景には、料金差が生じることでわかりにくくなり、むしろ顧客からの信頼を損なう可能性があるという指摘である。実際に「365日同一料金の宿」で検索してみると驚くほど多くの事例があるのだ。

需給バランスによって価格が決まるとして、そのバランスが直前まで刻々と変動する場合にはダイナミックプライシングが効果があるのではないだろうか。たとえば宿泊施設においては「今晩の宿」というニーズは都市部では確かに存在するだろうが、リゾート系の施設ではそこまで極端なケースは少ないだろう。その中でも売り手と買い手の双方で直前まで動的にニーズが変わるものがよい。飲食店の空席などもそういった部類に入るのではないだろうか。この話は改めて別の機会に考えてみたい。

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