ブロックチェーンと放送。MBS「オレたちやってマンデー」の場合

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あえて主語をMBS(毎日放送)として記述する。MBSは「オレたちやってマンデー」において、Daapsゲームのキャラクターを放送波に音声透かしで乗せてオンエアで配布した。

これを実現するために、Daapsを受信、管理するためのTokenPocketという統合トークン資産管理アプリ&プラットフォームがあり、TokenPocketアプリのブラウザ上で動作するCipher Cascadeというブロックチェーンゲームがあり、このゲームのキャラクターを番組を聴いた人だけに音声透かしによってアクセス権を付与してダウンロードさせた、というものだ。

放送局視点

放送局視点でいうと、今回MBSが提供したものは伝送路としての放送波であり、番組コンテンツである。これだけだと単なる土管の話になってしまうので、ゲームの内容や企画自体が番組内で作り上げられていくという体を取っている。番組を聞いた人だけが得られる特典としてキャラクターが設定された。これは特典に価値があれば、リスナーの誘導、増加を見込める。逆にゲーム側やスポンサー側からすると、番組に力があれば、多くのリスナーが付いているのであれば、メディアとしての利用価値が大きくなる。これは昔から変わらない放送としての原理原則である。

ただし、ここまでだと「放送」以外の方法で同じことができないかと言われると全くそうではない。キャラクターをダウンロードできるようにする制御を音声透かしで行うのであれば、ネット配信でも全く同じことができる。実際筆者はradikoのエリアフリーを経由してダウンロードを行った。

ブロックチェーン視点

上記に書いた音声透かしを使う仕組みは、TokenCastMediaというHAKUHODO Blockchain Initiativeのサービスを利用している。TokenCastMediaを利用すると、リスナーはラジオ番組の視聴を通じて情報を得るだけでなく、デジタルアセットのような価値を受け取ることができるようになる。

このサービスを使った番組制作によって、メディアをこれまでの「多くの生活者に情報を一斉に配信する媒体」から一歩進めて、「多くの生活者に価値を一斉に届けることができる媒体」に進化させることを目指します。

放送がリスナーに価値を届けることができる媒体になる。ということだが、ここで気になるのは「価値」とは何か。それは「放送」でしかできない、あるいは優位性があるのかという点だ。前者の価値というのは、通貨、またはそれに類するもの、または今回のようなゲームキャラとか握手券とかだろうか。随分前からケータイやスマホを介して多くの人に缶入り飲料をプレゼントみたいな試みは多数あったし、テレビを見るとポイントが貯まるサービスも行われているが、それらは有効で便利なものとして顧客やスポンサーから受け入れられているのだろうか。個人的にはノーであると思うし、その部分にブロックチェーン技術を導入したとしても、Dapps側に従来と異なる価値が提供されていない限り、それこそ「価値」があるとは思えない。

このプロジェクトに対する筆者の違和感は、ブロックチェーン自体とは無関係な、放送の一斉同報性の部分だけを利用している点である。それならそれこそ再流行中のQRコードでも表示しておけばいいし、他に代替手段は山ほどある。今回のブロックチェーンと放送というテーマにおいては、画期的な取り組みに対しては最大限の敬意を表するが、徹底的に本質的な検証をしていくべきだと思う。

これも個人的見解であるが、ブロックチェーンは5年後くらいにライツ管理の部分が、10年後くらいにP2P部分が利用されはじめ、そのあと今のYouTuberのような人々を軸にして本当のメディア革命が起きるんだると感じている。そのときにはスマホは今のPC並みに別のモノに追いやられているんだと思う。どう考えてもMyMeが表示装置部分以外ではその姿に現時点で一番近いと思う。

なおそういった本質的なことでは全く無いのだが、筆者はリアルタイムオンエア時にはキャラクターをゲットすることができなかった。理由は再生音量不足だったようで、1分後くらいにradikoのタイムフリー機能で問題なくダウンロードができた。まあ別に良いのだが、タイムフリーのときだけ音声透かしを付加しないというのはどうやるんだろうと関心があったが、実は今回に関しては関係なかったようだ。

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