テレビで見る。映画館で観る。そしてオスカーの話。

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イオンシネマ シアタス調布にて、1984年3月11日に公開された往年の名作「風の谷のナウシカ」のリバイバル上映が1週間限定で行われている(2019年3月2日(土)~3月10日(日))。ここでの体験がなかなか興味深かったので、簡単にレビューしたい。

イオンシネマシアタス調布は2017年9月29日にオープンした、比較的新しいシネマコンプレックスである。その為環境にもかなり整備され、最新鋭の技術が揃っている。都内シネコン最大級となる530席を備える10番スクリーンには立体音響テクノロジー「GDC featuring dts-X」がされており、幅約20mで前面の壁をほぼ覆う大型スクリーンの高画質映像と、イオンシネマ独自の4ウェイ立体音響システム「ULTIRA(ウルティラ)」を組み合わせて臨場感のある映像演出が可能となっている。このULTIRAのスピーカー環境だが、公式Twitterによると、サイド16台が左右で32台、リア3台が左右で6台でサラウンドスピーカーは合計38台。スクリーン裏のスピーカーは、C・R・L・RH・LHの5台+4発のサブウーファーで合計9台の総合計47台ということで、音に包まれるような臨場感が表現可能となっている。

風の谷のナウシカは1984年に作られた作品なので、実は筆者が生まれる前の作品だ。公開から30年以上経った今でも、金曜ロードショーで繰り返し放送されているため、観たことがある読者諸兄も多い事だろう。筆者もVHSに録画した金曜ロードショーの放送をテープがすり切れるまで見、原作を何度も何度も読み、soundtrackも月に1度聴く程度にはこの作品に思い入れがあるため、1度も劇場で観たことのないこの作品が劇場でリバイバル上映されると知った時は興奮が抑えられなかった。名画をスクリーンで、というのは午前十時の映画祭があるが、アニメーション作品は取り扱わないため、今回のリバイバル上映は実に珍しい試みである。

さて、実際に体験してどうだったか。上記の通り思い入れが強すぎるため本作への思い入れを抜きにして語るのはいささか難しいのだが、映像・音響共に素晴らしいの一言であった。本作品はこの大画面用に作られた作品ではないため、ところどころ粗が目立ってしまうのは明白で、静止画を動かすときなどの画面の粗さは確かにある。今と違いアナログ(セル画)での制作のためざらりとした質感なのだが、幸運な事に本作品の世界観にマッチしているため、だんだん慣れていったことが実情だ。同じく音声もアナログ音声で上記のスピーカーを完璧に駆使できるようには作られていないが、デジタル音声と違い丸みのある音声は非常に耳に馴染み、馴染みすぎるため作中の無音のシーンはテレビで観るよりも圧倒的に恐怖を感じた。何度も何度も観て、話の流れどころかセリフまで丸暗記しているにもかかわらず、テレビで観るときと全く印象が違うのは本作品が「映画」用に作られた作品だからではと思う。他の雑音が入るテレビでの再生環境と違い、いかに音楽のメリハリを付けているか、無音状態を効果的に使っているかを体感することが出来たのは非常に貴重な体験であった。画面いっぱいに広がる活劇と、そこに引き込ませるための音楽。今回の環境がより大画面且つ高臨場なスピーカー群ということもあるが、映画用に作られた作品は映画館でみるのに限る、という当たり前の感想に行き着いた。

今年のアカデミー賞はNetflix作品の『ROMA/ローマ』が監督賞、外国語映画賞、撮影賞を受賞し話題になった。こちらも映画館でみるべき作品という声が多いが、Netflix側は自社サービスとの理念に反することから劇場公開は極力しない構えだった。だが、つい先日シネマシアタス調布を含む日本国内48館での上映が決定した。この作品も映画館で観るべきポイントが多数あるが、はたして実際に劇場で観たときにどのような感想になるのも非常に気になるところだ。
映像配信サービスが増え、気軽に映画を楽しめるようになった。やはり「映画館で観るべき映画」は多数存在することを思い知ったし、今までの風の谷のナウシカの印象ががらりと変わるものになった。本作ファンの方や映画好きの方は、ぜひ一度劇場で観て体感して欲しい。