アプリと持ち去りOKで新たなUXを実現した飲食店「CRISP SALAD WORKS」

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現金の取扱は、店舗にとって非常に面倒だ。物理的なモノとして搬送をしなければならないし、そのときには盗難や紛失を防止する措置が必要で軽々に取り扱えない。不衛生でもある。できるだけ取り扱いたくないものであり、人手不足に悩む飲食業界にとってキャッシュレス化へのニーズは大きい。

そのようななか、チョップドサラダの専門店を展開する『CRISP SALAD WORKS』が2018年10月にオープンした広尾店、12月オープンの丸の内店では、セルフレジとアプリで完全なキャッシュレスを実現するだけでなく、まったく新しい店舗体験を作っている。

CRISP SALAD WORKSは、同店舗の注文と決済を行えるスマートフォン向けアプリ「CRISP」を配布しており、クレジットカード情報を登録すれば、場所や時間に関係なく事前に注文ができる。予定時刻にいけば、調理時間を待つことなく、商品を受け取れる。

CRISP Appのメニュー選択画面。ここからさらにトッピングなどの指定ができる画面に遷移する。
CRISP アプリの画面。店舗や希望時間を指定して注文し、確定した。

客がアプリを使うメリットは、「待たされない」だけではない。CRISP SALAD WORKSのサラダは、「クラシック・チキンシーザー」「カル・メックス」などのメニューに乗っているサラダのほか、それに野菜やトッピングを追加してカスタマイズしたり、野菜やトッピング、ドレッシングを指定してオリジナルのサラダを作ったりすることができ、非常に自由度が高い。ルールはかなり複雑だ。「ベースは、3つの選択肢から2つを選ぶ」「追加のIngredientsは、18種類あり、4つまでは追加費用なし。それ以上は1つあたり120円追加。さらにPremium Ingredientsが6種類あり、220円追加」。店頭でこれを理解したうえで、目移りするなか注文するのはハードルが高い。しかも、自分の後ろに行列があれば、そこからのプレッシャーも感じることになり、心地の良い体験とはならないだろう。しかし、アプリであれば、この店に慣れていなくても、落ち着いて悩むことができる。

また、一番驚いたのは、アプリで注文すると完成したサラダを受け取るのに店舗のスタッフに声を掛ける必要は一切なく、奥にある棚から自分のサラダを勝手に持ち去る仕組みだ。普通のレストランや弁当屋で予約をしても、「予約していた者ですが……」とスタッフに声を掛けなければならないし、混雑していればスタッフの手が空くのを待たなければならない。時間の短縮にはなるが、ゼロにはならない。ところが、この店では、そのような待ち時間さえもなくしている。完全にゼロなのだ。

CRISP アプリで注文すると、調理後のサラダはこの棚にならぶ。デジタルサイネージには、各注文ごとに調理の進捗情報が表示される。

取り間違えや盗難を危惧し、普通であれば商品棚にもカメラやタグなど何らかのテクノロジーを入れて管理したくなるものだと思うが、この店舗では、そのリスクへの対応としては何もしていない。ただ棚にサラダが置かれており、自由に取れる。防犯カメラもない。実際に取り違いが起きた場面に遭遇したが、注文と棚を確認した後に、注文と同じ商品を改めて調理して対応していた。棚の管理にテクノロジーを入れることでUXが悪くなることを嫌ったのか、取り違いの発生頻度の予測から、コストで判断したのか、その理由はわからない。ただ、テクノロジーを使うところと、使わずに業務フローで対応するところの割り切りができているからこそ、本当のSKIP THE LINEを実現できている。客のUXやスタッフの働き方などの理想像と、健全なコスト意識のバランスを持ったひとつの外食のあり方を提示している。

店の前には「完全キャッシュレス」の案内が立っている。
セルフレジはクレジットカードにだけ対応している。

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