エストニアのデジタルIDとX-roadの活用が日本でもスタート

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先日のエストニア訪問の際にITベンチャーのPlanetwayを訪問した。グローバルビジネスの開発責任者のAlex Arhipov氏とお会いし、彼らのビジネスについて話を伺った。彼は去年の4月に入社し、2015年に同社の創業者の平尾 憲映氏にロンドンで会う。通信技術について話した後で、彼は平尾氏から出身地を聞かれ、エストニアだと答えた。この一言がPlanetwayの起業のきっかけになる。

Alex氏はエストニアが電子政府の国だと伝え、イーエストニア(e-Estonia)や電子投票について語った。平尾氏はエストニアに興味をもち、3ヶ月後にはエストニアでPlanetwayが設立されていたのだ。(イーエストニアについてはこちらの記事を参照いただきたい)

「amazon、google、FacebookなどのGAFAは個人データを自社の利益のために使っている」とAlex 氏は指摘する。Planetwayは個人のデータは個人のものであり、個人はそこからベネフィットを得られるべきだと考え、行動を起こした。主なメンバーはエストニアと日本の技術者と経営者で、アメリカ、日本、エストニアの3拠点でビジネスをスタートした。

エストニアの電子社会には2つの必要条件がある。それはデジタルID(電子署名)とX-road(データの交換)だ。(Alex Arhipov)

X-roadはエストニアで10年以上使われているが、誰からもハッキングされていない。X-roadは民間と政府のデータベースにセキュアにつながっている。アクセス情報は全て、タイムスタンプされ、いつ誰がアクセスしたかが記録される。

企業がX-roadにアクセスするには理由が必要。例えば、銀行が住宅ローンの審査のために、国民の住所をX-roadで確認することが可能だ。銀行が顧客の住所を調べた場合、記録が残り、個人はその履歴やなぜ銀行がそれを調べたかをチェックできる。ここがGAFAとPlanetwayの大きな違いだ。

Planetwayはデータ活用の推進プラットフォームである「PlanetEco」を展開中だ。 そのコアテクノロジーは「PlanetCross」「PlanetID」の2つになる。情報連携基盤であるPlanetCrossと個人認証基盤であるPlanetIDを共通基盤とし、特定のテーマのもと各社 ・団体と協力して、オープン・イノベーションによる新たなサービス開発を行おうとしている。

彼らはサイバーセキュリティを意識し、グローバルスタンダードなホワイトハッカー育成プログラム「PlanetGuardians」を展開している。 複数のオープンデータベースを組み合わせてデータに新たな付加価値をもたせようとしている。また、彼らは独自のデータ解析エンジンの構築も視野に入れている。

同社はエストニアのX-roadの技術を日本向けにもカスタマイズしている。電力会社が「PlanetID」を活用することで、引っ越しの際の手間を省ける。引っ越す際に、別の電力会社に自分のデータへのアクセス権利を与えるようにすれば、顧客は引っ越しの際に無駄な労力を使わなくて良い。エストニアではこれが当たり前になり、面倒な手続きが不要になっている。。

APIをつなげれば、個人データの活用は可能だが、多くの企業が参加すると作業が面倒で手間がかかる。自分の個人データの活用が当たり前になり、個人データベースの連携が可能になると、企業の生産性がアップするだでなく、個人の利便性も高まる。時間とコストが激減し、顧客も企業もメリットを得られる。エストニアのデジタルIDの機能を活用し、タイムスタンプを実現すれば、セキュリティの面でも安心だとAlex氏は言う。

実際、日本でもコンセプトベースでビジネスがスタートしている。福岡では病院のデータベースと東京海上日動火災保険株式会社がセキュアにつながることで、企業と顧客の利便性がアップしている。保険金の支払い等に必要な契約内容や医療情報をデータで送ることで、保険金支払いまでにかかる期間を1ヵ月ほど短縮できることがわかった。

他にも不動産会社のスマートシティでのビジネスが検討されている。スマートシティに居住する個人には、新たにIDが付与され、そのIDを用いて、銀行、流通、物流などのあらゆるサービスが受けられるようになるのだ。

確かにPlanetwayが指摘するように、個人データは個人のものであり、個人はそこからベネフィットを得るべきだ。エストニア人が当たり前に享受するメリットを近々日本人も得られそうだ。筆者もこのオープンイノベーションの動きを意識し、ビジネスにこの考え方を取り入れていこうと思う。

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