経産省が示す、スマートモビリティ社会を目指していまやるべきこと

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スマートモビリティどういうものになっていくのだろう。スマートモビリティは自動運転が基本であることは確かだ。自動運転がベースになると移動時間を有効に使うことができる。こうした移動時間、移動空間をどう利用するのか。CES2019では世界中の自動車メーカーや自動車関連企業が、映画を見る、ショッピングをする、仕事をするといった未来像を提案していた。しかし、ここには疑問あるいは課題が多い。ディスプレイの問題としては、外の景色が見えることと、映像を表示するという2つを同時に満たす映像表示装置が存在していない。

何れにせよ、こうした世界観は一足飛びには実現しない。そこで当然、いまできることから始めることが重要だ。こうしたことを踏まえて、経済産業省は「スマートモビリティ推進協議会(仮)」を来年度からスタートさせるそうだ。これがなかなか現実的で、地に足のついた取り組みになりそうなのである。

 

経済産業省は、2019年の2月をIoTやAIを活用した新たなモビリティサービス(MaaS)の普及に向けた「スマートモビリティ推進月間」と定めて、4週間にわたって、スマートモビリティについて9社のピッチ&パネルトークを開催し、筆者はその最終回に参加をしてきた。テーマは「スタートアップのテックで、地域のモビリティサービスを救う」で、以下4名が登壇した。モデレーターはHEART CATCHの西村真理子氏だ。

・海外動向含めて日本の状況を解説する「デロイトトーマツコンサルティング 濵田悠氏」
・自家用あいのり「notteco 沼尾弘樹氏」
・クラウド配車、徳島で活躍する「電脳交通 近藤洋祐氏」
・タクシーあいのり、瞬間マッチングを提供する「NearMe 髙原幸一郎氏」

登壇者のひとり、電脳交通の近藤洋祐氏は、徳島のタクシー会社の若い社長で、自らタクシードライバー経験がある。彼がそこで感じたことは、タクシー会社のITに対する取り組みの遅れや、経営体質、ドライバーの高齢化など、数えきれない課題を感じたと言う。そこで安価で導入できるクラウド型配車システムを開発した。

クラウド配車、徳島で活躍する「電脳交通 代表取締役 近藤洋祐氏

タクシーを呼ぶという行為は、GASKET読者の皆様からするとUberやJapan Taxiのようなアプリを使うという話だろうが、世の中は決してそれが主流ではなく、まだまだ圧倒的に電話をかけてくることのほうが多い。それどころか、老人の場合はアプリはもちろん、そもそも自分で電話をかけることすらできなかったり、田舎の独居老人の通院のために、子供が遠隔地からタクシー会社に電話をかけて、家の場所と鍵の隠し場所を伝えて、ドライバーに親をクルマに乗せてもらう、といったようなことが起こるのだと言う。

電脳交通のシステムは、電話などの既存のアナログな方法も含めた受付ルートからのタクシー配車、電子マネーによる決済が可能で、大手の企業が導入する同様のシステムよりも遥かに安く利用することができる。

また運営費の一部を、車内に設置されたタクシーサイネージの広告費で賄うという考えだ。このタクシーサイネージについてはこれまでも数多くの試みがなされ、現在でも全国主要8都市に1万台のサイネージを展開しているTOKYO PRIMEのような例もある。TOKYO PRIMEは媒体資料によると月間700万リーチで、月間140万から600万円という価格設定がされている。一方あくまでも筆者感覚だが、電脳交通のデジタルサイネージは、純粋な「数」をベースにした広告媒体というよりは、地域の交通を確保するために、地域の企業や店舗を繋ぎ、それぞれがITによって連携しあって地域経済の活性化を推進するといったモデルなのであろう。経済産業省の「モビリティ✕非モビリティで経済を活性化」という考え方に近い。

 

モビリティーやMaaSは、玉虫色な世界観の話ばかりが先行しがちだが「移動を単体のみで捉えると有益ではない」、「地域全体の中で多様な経済活動と連携し、収益性を確保」しっかり現実を踏まえている。IoTやAIを駆使した、夢のモビリティービークルのある暮らしもきっと便利なのだと思うが、それよりも、いやそこに向けて、今できることをきっちりやっていくことがやはり重要であると感じた。MaaSは決して交通だけのものではないし、交通から先に広げるためにも極めて重要だ。