タカラヅカのお嬢さんを運ぶ夢の鉄道、阪急電鉄のブランド力

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兵庫県宝塚市に本拠地がある宝塚大劇場に向けて東京を出発する。のぞみに乗り新大阪駅に到着して大阪駅まで移動、そこから少し歩いて梅田駅から阪急電車に乗り換える。梅田駅の改札を抜けると、ずらっと並んだ重厚感のある輝いた赤茶色の車体が見える。その瞬間から気持ちが高揚する。目的地は兵庫県でまだ大阪府の梅田駅にいるにも関わらず思うのだ、

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あぁ、ついに来たわタカラヅカに!

この高揚感は筆者がタカラヅカファンだからなのかと特に何も気に留めずにいた。しかし、数年前にあることが話題になり、阪急電鉄のブランド力について考えるようになる。それは、阪急電鉄に乗る人が首都圏の電車に乗ったとき、「仕事の効率を上げる方法」、「勝つための話術」、「胃薬」、「栄養ドリンク」…といった精神攻撃をされるような広告が多く、東京は何故こんなに追い込まれているのか、というSNSでの投稿だ。そう言われてみると、阪急電鉄に乗車しているときは気にも止めないが、帰りの電車で阪急電鉄から他の電鉄に乗り換えたときに自己啓発やスキャンダルなどの広告が多く目に止まり、現実に引き戻されることが多々ある。

実際、他の電鉄よりも独特の基準を設け、広告を規制しているのだろうか。調べてみたところこんな記事があった。

「電車の中は公共の場所と考えております。週刊誌の広告にはごくまれに公共の場所にふさわしくない内容が含まれる場合があります。広告はお金をいただいて掲載させていただくものなので、当社としては内容の1つひとつをチェックいたしかねます。そこで、もとより週刊誌の広告はすべてご遠慮いただいております」

マイナビニュース https://news.mynavi.jp/article/trivia-102/

ネットではこれに対し賛同する声が多い。週刊誌の規制以外の情報は探してみたが見当たらなかった。阪急電鉄を利用する人からのこういった印象は、阪急自体が不動産、阪急百貨店、娯楽などの施設を保有しているため、自社広告が掲載されることも多く、それも車内の雰囲気を殺伐とさせないことに影響している可能性もある。

また、阪急電鉄のイメージについて調べていくと、阪急が広告以外にも気を遣っているポイントは他にもあがってきた。例えば車体の塗装。あの独特な重婚感のある赤茶色の車体のカラーは「阪急マルーン」と呼ばれ、明治43年から100 年以上ブランドカラーとして使われてきている。また、そのカラーを最大限に活かすべく塗装やメンテナンスにもこだわっている。

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さらに、車両だけではなく、ホームの床も気を使っている。梅田駅のホームの床は高濃度の樹脂ワックスを月に1回塗っており、滑りにくく、引っかかりにくい状態を保っているのだという。直接目に見えない部分にまで力を入れている。

阪急梅田駅のホームは滑りにくくする処理がされている。

さらに、阪急電鉄はここまでブランディングが匠なのは他の電鉄とは少しわけが違うようだ。阪急電鉄はもともと人の集まる地域に鉄道を引いたのではなく、鉄道を引いてから便利で環境の良い住宅、デパート、タカラヅカ他エンターテインメントを楽しめる施設を作り沿線価値を向上させていった。鉄道の開業と共に展開した様々な事業は、私鉄経営のビジネスモデルの創造として語られることも多い。そのこともあり、鉄道と街との融合は特に得意としているのだろう。目的地に到着してからではなく、その移動手段である鉄道からもう演出は始まっているのだ。

阪急電鉄沿線の宝塚市にある宝塚大劇場。宝塚駅を降り、改札を通ると宝塚大劇場とテイストの似た建物が劇場まで並んでいるのが見える。劇場まで続く道は「花のみち」と呼ばれ、商店街が並び、花が咲き乱れている。宝塚大劇場を越えると武庫川にかかる宝塚大橋がある。宝塚大橋と平行に阪急電鉄が通っている。街自体がブランディングされているのだ。電車も街の一部だ。

最近世の中では広告のデジタル化が進み、それに伴い鉄道時代もスタイリッシュに進化していくことが多い。デザイン自体も「デジタル化」してしまっているのだ。阪急はただ新しいものを考えなしに次々と取り入れているのではなく、変えるべきところは変えて時代に適合していき、古き良き雰囲気を最新の状態で保ち続けている。タカラヅカについても、実はベルばらや中世ヨーロッパの華々しい演目だけではなく、現代の漫画やSFの演目などに挑戦しつつ、おさえておかねばならぬタカラヅカの古き良き部分はバランスをとりながら必ず残している。そこにもブランドを大切にする精神が垣間見れる。

どんなに時代が変わろうとも変えてはならないものがある。それを守りつつ進化していくことでブランドを育て、利用する人の目線に立つことによってそのブランドが支持されるのである。