実録「株式投資型クラウドファンディング」第2回~株式会社マルチブック~

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サポーターが株主となって応援する「株式投資型クラウドファンディング」の実例を紹介するシリーズ。DANベンチャーキャピタルが運営するプラットフォームGoAngelを使い、資金調達を行っている会社を紹介している。第2回の今回は、業種はガラリと変わり、グローバルERPクラウドで中小企業の海外進出を支援しているマルチブックの事例だ。

マルチブックは、海外展開する日本企業の現地法人向けに、会計システムを中心とする経営基幹システム(ERP=Enterprise Resources Planning)の構築を行っている会社である。SAPをプラットフォームとして専門のシステムコンサルタントが活躍しており、GoAngelの株主募集には、同社の村山社長を始めとする役員の友人・知人の他、パートナーのシステムコンサルタントが株主として出資している。

マルチブックは、日本IBMからフィリップ・モリスに転籍してシステム開発に従事していた村山忠昭氏が、2000年に起業して設立したシステムコンサルティング会社である。SAPの技術者を集め、主に日本企業の海外現地法人向けに、会計システム及び購買在庫管理システム等の周辺システムを基幹業務システム(ERP=Enterprise Resources Planning)として構築。世界17ヶ国に、現地の会計や税務の実務に精通したコンサルタントを配置し、クライアントの現場の実務に応じたきめ細かなシステム構築できることを強みとしている。
SAPを使ったシステム開発に必要なコストは、1社あたり最低でも数千万円。導入するのは主に上場会社の現地法人等、費用負担力のある大会社だ。そこで、中堅中小企業の海外進出ニーズに応えるべく、SAPのシステム開発で培ったノウハウをパッケージ化。クラウド型のグローバルERPシステム「multibook」を開発した。multibookは会計システムを中心に、基幹業務システムを英語、タイ語、ベトナム語、韓国語などマルチ言語で利用できることを特徴としている。日本企業の現地法人では、現地の会計システムを使っているケースが多く、日本への報告にあたっては試算表を表計算ソフト等に打ち直し、日本語に翻訳して報告しているケースが殆ど。multibookを使うと、例えばタイ語による会計データが、即時に日本語でも生成され、円貨換算されてリアルタイムで日本の親会社等で把握できることがメリットとなる。

マルチブックのGoAngel募集前の資本金は54百万円で従業員は40名。直近の売上高は739百万円。経常利益は0.5百万円で純資産は135百万円。システムコンサルティング事業は優良クライアントから旺盛なシステム開発ニーズで好調に推移。収益性も高いものの、売上はコンサルタント人材に依存し成長性にも限界がある。一方、クラウド型のmultibook事業の収益構造はストックモデルの安定収益。ユーザー数の増加によって月額利用料が積み上がっていく構造だ。ただし、システム開発に数億円の投資が必要であるとともに、一定のユーザー数を確保して損益分岐点を超えるまでは赤字が続く。そこで金融機関からの長期借入金に、GoAngelでの資本調達を組み合わせて資金を調達することにしたものだ。

GoAngelでのマルチブックの募集開始日は2017年9月13日。10月11日までの約1ヶ月間を募集期間として、目標募集額2千万円に設定して申込を受け付けた。以下が、GoAngelの画面上に示されたマルチブックの募集事項の一部だ。

最低申込単位は25万円。法律の定めで株式型CFでは、一人当たりの投資金額は、1社につき50万円が上限とされている。発行価額は1株あたり50,000円。DANベンチャーキャピタルの募集取扱手数料を含めた募集価額は54,320円となる。申込コースは25万円(5株)と50万円(10株)のコース選択となっている。以下はマルチブックの応募状況を時系列で示したグラフだ。

応募は初日より順調に積み上がり、募集開始12日目の9月24日に目標の50%を突破。19日目の10/1には80%に達し、目標募集額には24日目の100%を超えた。その後、キャンセル待ち申込受付となり、最終の申込率は107.5%で終了した。
GoAngelでは、募集期間最終日までに申込が目標募集額に達しなかった場合には、募集は中止となる。逆に申込が目標募集額を超えた場合には、先着順で申込を受け付け、目標募集額が増資金額となる。マルチブックの発行済み株式数は、増資前の11,160株。今回の2千万円(400株)の増資による希釈化率は3.6%。筆頭株主である村山社長の持ち株比率は、増資前の62.8%から60.6%に低下したのみだ。これは1株あたりの純資産12,115千円に対して発行価額は50,000円。企業価値を5億8千万円と評価していることによる。
マルチブックの株主募集には、主に村山社長と他の役員の友人・知人、並びにパートナーのコンサルタント等40名が参加した。このほか、マルチブックのケースでは、GoAngelに登録した一般の投資家も15名ほど株主として参加している。マルチブックはGoAngel登録後、証券会社、監査法人及び信託銀行と契約を締結、本格的な上場準備を開始した。今後の成長が大いに期待されるところである。