【CES2019】Vol.09 好むと好まざるとにかかわらず8Kが普及する理由

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筆者は8Kに関してはどの部分を見てた話をするかによって普及すると言えるし、普及しないとも言えると見ている。CESでは昨年以上に、8Kテレビ(もちろんディスプレイという意味だ)が中国や韓国メーカーから積極的にアピールされていた。それもお祭り騒ぎ的ではなく、粛々とごくごく当たり前のようにだ。

例によって煽り気味に書く。テレビの60年を超える歴史の中で、地デジまでは「制作、伝送、表示」が主に制度によって三位一体で進化を遂げてきた。ところが10年ほど前からこれがそれぞれバラバラに動くようになってしまっている。カメラとディスプレイの4K化が先行し、ポスプロがそれを追いかけ、伝送路がネットで現実味を帯びてくると、最後に放送制度が4Kに対応した。途中から8Kがこれに加わり、4K8K放送が衛星でスタートしたのが2018年の12月である。

中国マーケットが8Kを牽引する
液晶パネルの製造の大部分は中国で行われている。そして14億を超える人口を背景に、一定数以上の富裕層が大型で高解像度な8Kテレビを選択する。このためパネルの製造ラインはじきに8K中心になりっていくだろう。こうした市場を牽引するのは中国に加えて今後やインドやインドネシアなどにも波及する。

8Kカメラは準備OK
先日シャープが8Kのカメラを発表した。内容から見て映画やテレビの制作現場で使えるようなレベルのものでは決して無い。運動会カメラとまでは言わないが、前述したような層が使うようなものと見るべきだ。4Kがそうであったように、スマホのカメラが8K化するのもあと2,3年だろう。プロフェッショナルが使うカメラでは、すでに8Kカメラは4Kカメラと価格的には変わらないところまでこなれてきている。筆者もREDのHeliumを使った8Kコンテンツを仕上げたが、数年前までのような巨大で機動性がなく、とんでもない価格のものではなく、シネマカメラとしては普通のレベルである。

AIベースのアップコンバート(超解像)
4Kの登場時にも、「4Kはコンテンツがない、何を見るのだ?」という指摘が多数あったが、関係者のそうしたある意味真っ当な意見とは関係なく、視聴者は2Kを単純に超解像技術によるアップコンバートで見ている。これも筆者の経験だが、当時あるメーカーと行った消費者テストで、4Kテレビに対して2Kからのアップコンバートと、ピュア4Kブラインドテストを行ったところ、人によっては、あるいはコンテンツによってはアップコンのほうが綺麗であると回答した人が上回るケースもあった。2Kになったときも、HDTVでDVDを再生しながら「さすがフルハイビジョンは違うなあ」と満足した人が相当数いた。良くも悪くもそんなもんである。最近の超解像は、AIによるオブジェクト検出が飛躍的に進化していて、今まで以上に「綺麗に見える」という印象が一般的だろう。LCDよりOLEDが格上みたいな話と似ている。(黒に関しては間違いではないとも言えるが)

デジタルサイネージは8Kでは全く足りない
テレビではないが、デジタルサイネージでは画面サイズがどんどん大きくなっていくので、現時点でも8Kでは全く足りない現場が山ほどある。筆者の事例でも12K案件まであるし、今動いている案件はなんと160Kである。

特にカメラは、いつの時代でもその時点で経済的に許せる範囲で、一番いい状態の画で撮っておきたいと考えるものだ。そして実際そうすることで、アップコンバートした時には必ずその効果が現れる。アナログSD放送の時代に、4:2:2のD1デジタルでポスプロ作業を行い、それをアナログ1インチテープで局納品してOAしたものと、すべてをアナログ処理したものでは誰の目にもその違いがわかったのと同じことだと思う。

というここまでの話と、8K放送が普及するという話は別問題である。極論すれば、そんなこととはほぼ無関係に、テレビの8K化は我々(ニホンジン)が好むと好まざるとにかかわらず確実に進んでしまう。右旋だ左旋だ、アナログ空き地だ、ケーブルだ、いや5G だ、やっぱ光だ、という議論は正しいけれど正直どうでもいい議論だ。すっかり三位一体ではなくなったテレビを取り巻く環境から逃れることはもう出来ない。逆に言えば、別に何も気にすることはないということだ。