デジタルサイネージの設置工事におけるチェック項目

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デジタルサイネージの設計において、ゼネコンや内装業者が、実現可能性のない設置計画を立てる、メンテナンス性が著しく劣る設計を行うなどしてトラブルとなることが少なくない。デジタルサイネージの利用範囲が広がった一方で、設置に関わる知見が専門業者内にとどまっていることが原因かと思われる。網羅的とまでは言えないが、設置するうえで確認するべき項目をまとめたので、設置を検討する際には、参考としていただければ幸いである。

電源

  • 通電時間は確認できているか
  • 音声を出すサイネージはカットリレー電源になっているか
  • 回路の容量は足りているか
  • 成端処理の責任分界点は明確か
  • コンセント口数は確認できているか

電源を検討するうえで、基本的に「通電時間は長めに」「電源容量は大きめ」と、余裕を持った設計とし、配線や成端などの作業を弱電工事の専門業者に依頼することが望ましい。たとえば、通電する時間は営業時間よりも長ければいいとタカをくくっていると、営業時間外のメンテナンスが十分に行えずに支障をきたすことになるし、電気回路の容量は、皮相電力で計算するべきにもかかわらず、カタログなどに記載されている消費電力をもとに電源回路の設計を依頼すれば、足りなくなる恐れがある。また、カットリレー電源は、火災報知器が鳴動した際に電源供給を停止することで、音声を出す機材を強制終了させ、警報音が十分に伝わるようにするための設備だ。サイネージで音声を流す場合は、モニターもしくはスピーカーをこれに接続しなければ、消防点検をクリアできず、工期に大きな影響を与えかねない。

通信環境

  • 有線LANか、無線LANか
  • IPは固定か、自動取得か
  • 特定のプロキシを経由する必要はあるか
  • MACアドレスフィルタリングがかかっていないか
  • 必要なポートは開いているか
  • プロバイダ契約はできているか
  • EPS室などのバックヤードにルーター等の通信機器を設置する場所は確保できているか
  • 通信速度は十分か

最近のサイネージのほとんどは、遠隔での管理ができるようにオンライン化している。オンライン環境の構築は、メディアオーナーやロケーションオーナーのネットワーク責任者や通建業者で行うケースが多いため、事前にキーマンを掴まえてこれらのことを確認しておく。STBによっては、プロキシの設定が行えないものもあるため、通信環境が固まってから機材選定を行うほうが安全だ。

機材設置箇所

  • 設置する壁面/床/梁の強度は十分か
  • 床や壁面のアンカーを打つことは可能か
  • 配管などとの干渉はないか
  • 散水障害になっていないか
  • 照明と干渉していないか
  • サインや防犯カメラと干渉していないか
  • モニター周辺でSTBの設置箇所を確保できるか(HDMIケーブルで結線するのであれば、ケーブル長5m以内に設置箇所を確保できるか)
  • モニターやSTBから電源まで、機材についている標準コードで取り回せるか

設置工事を行ううえでの確認事項。事前に気がつきやすく、現場で処置できることもあるため、クリティカルな問題になることは少ないが、スムーズな設置のためには確認しておきたい。天吊サイネージがサインと干渉してモニター位置をずらそうとしたら、今度は配管がじゃまになって設置できなかった、という事例もある。

筐体

  • モニターとSTBの排熱は考慮されているか
  • 設置や取り外し作業に必要なクリアランスはあるか
  • モニターやSTBの電源ランプを視認できるか
  • モニターやSTBのACアダプターの設置スペースはあるか
  • モニターのIRセンサーが塞がれていないか/リモコン操作できるか
  • モニターの照度センサーが露出できるか
  • スピーカーやアンプの設置スペースはあるか
  • モニター保護ガラスの有無について検討したか
  • モニター熱遮断シートの設置は検討したか
  • 工具なく開口して内部を確認できるか
  • モニターやSTBの交換やアクセスに職人もしくは複数人が必要か
  • 使用しているモニターやSTBが廃盤になったとき、別の機種を設置できるだけのクリアランスを持っているか

ゼネコンや内装業者に筐体設計を任せていると問題が出やすいところだ。選定した機材ごとの対応が必要な項目が多いうえ、彼らは、設置したら終わりと考え、メンテナンス性への考慮が不十分であることが多い。機材は壊れる。さらにいえば、廃盤になることを前提にしたい。近年では、モニターは3年保証が当たり前になったとはいえ、無償になるのは修理費だけで、修理のための取り外しなどはコストがかかる。保証期間だったために修理費ゼロだが、取り外し作業費に20万円かかった、ということもある。結果として意匠を優先させてメンテナンス性を犠牲にするケースも多いが、メリットとデメリットを明確にしたうえでの判断としておかないと、後日トラブルになりかねない。

施工

  • 関係各社の責任分界点は明確になっているか
  • 機材搬入経路の確認
  • 設置に複数日かかる場合の保管場所/盗難防止策
  • 施工期間中のほこり対策/機材保護

基本だが、図面や機材系統図を起こし、関係各社を集めて打合せを行い、工事取合いをしっかりと行っておくことが大事だ。責任分界点明確にしておかないと、成端処理が行われていない電源やLANケーブルが転がっていて途方にくれたり、むき出しのケーブルに誰がモールをつけるのかで揉めたりすることになる。また、大型筐体だと「ガラスをはめ込む前に搬入する」など、工程を縫った段取りが必要になる。搬入については、事前に内装業者と綿密に打合せを行って搬入計画を立案し、関係各社に広く共有しておこう。それから、設置に複数日かかる場合は、機材の保管場所を事前に確保しておく必要がある。ただ場所を確保するだけではなく、警備体制を確認しておくことも重要だ。モニターやPCは高額なうえ、転売しやすいため、盗難の被害にあいやすい。鍵が難しい場合でも、シートで隠すなどの処置はしておきたい。設置後になると、盗難リスクは大幅に下がるが、今度はその他の業者がモノをぶつけて破損する恐れがでてくる。周囲に立入禁止のポールを立てる、養生材で覆うなどの処置を取って、機材を保護しなければならない。