実録「株式投資型クラウドファンディング」第1回~悟中株式会社「銀座鮨醇」~

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2015年5月施行の改正金融商品取引法で制度化された「株式投資型クラウドファンディング」。クラウドファンディングというと、ポピュラーなのは資金を拠出したサポーターにリターンとして製品やサービスが提供される「購入型」。これに対して「株式投資型」の特徴は、サポーターに新株が発行されて株主となること。端的には、「購入型」は代金前払いのネット通販で、「株式型」は中小企業のインターネット公募増資といえる。
ここでは、DANベンチャーキャピタルが運営する株式型投資型クラウドファンディングのプラットフォームGoAngel(ゴ―エンジェル)を使って資金調達を行った実例を紹介していこう。

お客様が株主として出資。熟成鮨を極める悟中株式会社

第1回の今回は、2017年12月にGoAngelで16百万円の資金調達に成功した悟中株式会社を紹介する。2016年9月に東京銀座にすし店「銀座鮨醇」を開業すべく資本金600万円で設立された創業期の会社である。
銀座鮨醇の特徴は会員制と熟成のネタにある。魚と言えば鮮度が命というのが常識。その常識を覆すのが熟成鮨である。銀座鮨醇では、江戸前の熟成の技を恒温恒湿の熟成専用冷蔵庫によって極め、魚種によっては最長1ヶ月の期間をかけて熟成する。熟成によってアミノ酸が増し、とろけるような旨味が出るのは熟成肉と同じだ。
銀座鮨醇の客席数は板前が一人で対応するのに最適なカウンターのみの8席。飲み物を含めて客単価は2万円。会員制により、会員と会員紹介のビジターのみが利用できる銀座の隠れ家的な性格もあり、ちょっとしたステータスを味わえるのも特徴だ。経営者や大企業の中堅社員等を中心にファンのお客様を広がった。

GoAngelとの出会いは、飲食店専門の購入型クラウドファンディングを運営する会社の社長の紹介。お店のイベント参加をリターンとして提供する「購入型」では、2万円のイベント参加券を50名が先行購入しても100万円。一方、悟中の資金需要は、リース契約となっている内装設備の買取資金1,500万円と、購入型では遠く及ばない。そこでちょうどスタートしたばかりの「株式投資型」のGoAngelを検討することになった。

GoAngelの株式募集の特徴は「拡大縁故募集」。株式投資に関心のある方から資金を集めるのではなく、会社の事業や経営者の理念に共感する方に株主になってもらう。そのような方は、証券会社の周りにはいない。会社に関心のある方は、会社の周りにいる。いわば会社のファンである。このような資金調達の方法は、米国では”Family & Friends Financing”と呼ばれ、そのマーケットは年間600億ドル(約6兆6千億円)の規模を持つ。このような仕組みを日本に広げるのがGoAngelの目指すところだ。
当初は、インターネットで幅広く投資家が集まってくると思っていた悟中の廣瀬社長。GoAngelの拡大縁故募集のコンセプトを聞いて驚いた。ベンチャーキャピタルのように、上場後の売却によってキャピタルゲインを上げることを目的とした投資とは異なり、投資の目的は、会社や事業に対する共感や支援。金銭的リターンは二の次という。そのような奇特な投資をしてくれる投資家などいるのだろうか?疑問に思った廣瀬社長だったが、「ファンのお客様こそ株主となっていただける最大の候補」との説明を聞いて腑に落ちた。廣瀬社長の周囲には銀座鮨醇のお客様の他、別会社で運営している飲食店の常連客等もいる。お客様に株主になっていただければ、愛着が強まり来店頻度も高まるはず。株主が知人友人をお店に連れて行けばお客様も増える。売上が増えて利益もあがり、株主にも還元できる素晴らしい仕組みとなると期待も高まった。

悟中㈱は2017年11月20日にDANベンチャーキャピタルの審査を通過。11月27日から12月20日までの24日間を募集期間として50名から16,100千円の募集に成功した。

クラウドファンディングだからインターネットで全く知らない個人投資家が投資をしてくると思っている人も多いだろう。しかし、よく考えてみると、上場株式だけでも3,650銘柄もある我が国。株式投資を志向する投資家にとって既に選択肢は多すぎる。流動性も低く信用力も低い非上場の中小企業の株式が資金運用目的の個人投資家の選択肢に入るとは常識的には考えにくい。一部の未公開株投資マニアはその例外と言えよう。

身近な中小企業に株主として出資して応援するGoAngel。悟中のような成長力ある多くの中小企業にエクイティファイナンスの機会を広げるインフラとして定着することを望みたい。