鉄道の乗客から「不安」をなくすサイネージ

Digital Signage /

2018年の年末に、黎デザイン総合計画研究所の赤瀬達三さんとお話する機会があった。赤瀬さんは、東京メトロの前身である営団地下鉄のサイン見直しに携わり、オレンジ色は銀座線、赤色は丸ノ内線などの路線ごとのシンボルマークなどを使ったトータルのサインシステムを作り上げたほか、六本木ヒルズなどの商業施設、首都高速などのサインデザインを手がけてきた、サインシステム界の巨人だ。

そのような、赤瀬さんから宿題をいただいた。

「鉄道に乗る人は、漠然とした不安を持っている。これをデジタルサイネージで解消できないか」

各鉄道会社間の相互乗入によって長距離を走る列車が増え、その行き先表示版には、見慣れない駅名を見かけることが少なくない。また、優等列車が多様化し、眼の前の列車が目的の駅に停車するのかもわかりくい。しかも、事前にスマホの乗換案内アプリで経路を調べていても、そこに出てくるのは定時運行したときの情報である。事故や混雑で遅延すれば、諸々の時刻が変わってくる。そのため、「この列車に乗っていいのか」との不安を持ちながら鉄道を利用することになる。

不安というのは、乗客にとって大きなストレスであり、公共交通機関を利用しない理由としては、「不便」 より大きいのだという。十勝バスでは、不便ではなく不安を解消することで、利用者数を増やしているそうだ。

バス沿線の住宅を戸別訪問していくうちに意外なことが判明しました。それは、バスを利用しない人たちの多くは、「不便だから利用しない」のではなく「不安だから利用しない」という事実でした。例えば、料金は前払いなのか後払いなのか、前方から乗るのか後方から乗るのか、整理券を取らなければいけないのか、目的地までの料金はいくらかかるのか、そもそも自分の家の前にあるバス停からはどこに行けるのか、そのような「わからないことへの不安」がバスの利用から足を遠ざけている最大の理由だったのです。

40年ぶりに利用客数の増加を実現した十勝バスの挑戦! V字回復のキーワードは「交通の見える化」

バスほどではないにせよ、鉄道もまた乗客に「不安」を与えていることは間違いない。そのようななか、たとえばデジタルサイネージで、到着した列車の停車駅や、遅延なども折り込んだ到着予定時刻を案内できれば、不安というストレスを和らげることができるのではないかということだった。鉄道会社は、遅延が発生しているときに、到着予定時刻を出してさらに外れることをリスクとし、あまりそのような情報を出したがらない傾向にある。しかし、たとえ外したとしても、何も案内しないよりは、おおよそでも、結果として外したとしても、予測をつけて案内するほうが、親切であることには間違いない。

どのような情報を提供すれば、不安を解消できるだろうか。どのようなビジュアルであれば、その情報を多くの人に伝えることができるだろうか(そしてクレームを未然に防げるだろうか……)。