宝くじになっている台湾のレシートとインセンティブの重要性

AI/IoT /

先日台湾に出かけた時のこと。間もなく東京にも出店予定の誠品生活で買い物をしたら、紙のレシートと一緒に、写真のようなものを受け取った。

これは台湾の電子発票(電子レシート)である。といってもこのように紙があるのだが、これは消費者が電子的に領収書を受け取る(事業者に発行させる)ための入口で、QRコードを介して情報にアクセスする。そしてそこには、消費者が確実に情報にアクセスしたくなる「仕掛け」が埋め込まれている。

一方、台湾では、消費税(現地では営業税と称する)をインボイス方式で管理しており、事業者は自身が発行するインボイス(請求書や納品書)に記載された税額のみを控除することができる、すなわち「仕入税額控除」の手法を導入している。その際の紙のレシートは、通し番号やすかしが入ったものを事業者が税務機関から購入し、発行することになっている。

電子レシートの話かと思えば、写真はその「仕掛け」であり、それ以外にも紙のレシートの話がでてきて、新年早々GASKETの記事は、話題があちこち散らかっているのではないか--こうしたお叱りをいただきそうなものだが、もう少しお付き合いいただきたい。
この複雑な構造の組合せは、税務当局をはじめとした台湾の行政によるものだが、彼らが目指しているのは「脱税の防止」である。以前の台湾は領収書を発行する習慣に乏しく、事業者による脱税が横行していたという。脱税は政府からすれば重大な社会問題であり、税務当局として何とか事態を改善すべく、どうしたら事業者が正しく領収書を発行するようになるのかを考え抜いた結果が、これなのである。

まず、領収書が生み出される最も重要なインセンティブは、言うまでもなく消費者がそれを求めること、つまり「領収書(レシート)ください」の一言である。ところが、少額決済や源泉徴収対象者の場合、あまり領収書に関心がないし、むしろゴミになるので断るケースもあるはずだ。
そこで台湾の税務当局が考えたのは、レシートに宝くじをつけるということ。これにより消費者はどのような場合でも領収書を求めるインセンティブが格段に上昇する。これが冒頭で述べた「仕掛け」である。

次に、事業者側の不正を抑止しなければならない。消費者のインセンティブがあくまで「もしかしたら宝くじが当たるかも」に終始している場合、事業者が偽りの領収書を発行するかもしれない。そのため、紙の領収書そのものに公的な性格を持たせることで、偽造を防止した。そして領収書に係る手続きをそこまで制度的に堅牢な状態にすれば、決済情報を電子的手段(ペーパーレス)でやりとりするインセンティブは、事業者のIT化の進捗に比例して高まるはずだ。

長々と書いてきたが、本稿で述べたかったのは「インセンティブの重要性」である。そしてこれが、これからの日本社会にとって、益々重要なテーマになっていくとGASKETは考えている。
2019年の日本経済の見通しは、有り体に言って曇りがかっている。少なくとも2018年までの「とりあえずやってみよう」といった、よく言えば積極的、悪く言えば粗雑なアプローチは、少しずつ困難になっていくはずだ。おそらく年の後半には、当初予算からの(事業縮小方向での)計画変更等も生じうるだろう。

一方で日本社会そのものは、相変わらずの人手不足であり、しかもこれは個々人のリテラシーに根付いた構造的問題となっている。景気の如何に関わらず労働力人口が減少する以上、デジタルトランスフォーメーションを中心に「やるべきことはやる」ことが、これまで以上に求められる。
ところが人間、理屈ではそう簡単に動かない。だからこそ消費者、事業者、さらには行政を含め、それぞれに設定されたインセンティブの下で動き出せるかどうかが、問題解決のカギを握る。そしてIoTにせよAIにせよ、すべては道具であり手段である以上、すべてのステークホルダーで共有可能な目的が設定され、その達成に向けた個々のインセンティブとの調和の中で、IoTやAIははじめて効果を発揮するはずだ。

最後に、台湾の電子レシートがもたらしたもう一つの効果をご紹介しよう。このように紙のQRコードが発行されると、紙のレシートがゴミ化するという問題からは逃れられない。そこで台湾では街角にこのレシートを回収するボックスが作られている。ならば回収されたレシートから宝くじの当選が生まれてしまう可能性が生じるわけだが、そうした当選金は恵まれない方々に寄付されるなど、社会福祉の財源になるという。
我が国が見習うべきお手本は、どうやら世界のあちこちに転がっているようだ。今年もGASKETではそうしたヒントを引き続きご提供したい。