ロボットやAIが人の仕事を本当に奪うのか?

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ロボットやAIの普及でホワイトカラーの仕事が奪われるという記事が、昨年あたりから日本でも見受けられるようになった。2013年のオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授の研究が記事の元ネタになっているが、本当にロボットが人の仕事を奪うのだろうか?

これとは、逆の意見を述べているのが、サブサンプション・アーキテクチャを提唱し、「ロボットの父」とも呼ばれるロドニー・ブルックス氏だ。お掃除ロボットルンバが、彼のサブサンプション・アーキテクチャから生まれたことは有名だ。

過去に労働に関して起きた革命は、仕事を「炎天下で働くような骨の折れる労働ではなく、ずっと楽なものにしました。人々がもっと良い仕事に就けるよう、これからも変えていくべきです。(ロドニー・ブルックス)

2010年にロドニー・ブルックス氏は雑誌ディスカバー誌に「ロボットが侵略してくる、歓迎しよう」という記事を発表した。博士は人間のすることは無くならないと主張する。本来、人がやるべきクリエイティブな仕事に人は就くべきだ。

実際、工場だけでなく、人間が作業できないエリアでロボットが使われるようになっている。2011年の東日本大震災では、福島原発の事故現場の災害対応にiRobot社のロボットが採用された。これがきっかけとなり、災害現場でもロボットを活用できることが知られるようになった。

最近ではコラボレーション・ロボットという考えが一般的になってきている。センサーを活用して人と協業するように設計されたロボットの採用が進んでいる。簡単な教育を受けるだけで、現場の担当者がロボットを操作でき、人とロボットが協力しながら、仕事を進めるようになってきた。これまで自動化が進んでいなかった製造分野や人手不足に苦しむ中小企業でも、導入されていくはずだ。

先進国だけでなく、今後は発展途上国でも人が工場で働かなくなるとロドニー博士は指摘する。人件費の上昇が続き、採用が難しくなる状況で、コラボレーションロボットが普及し、人との協業が進んでいく。

最近ではポール・R・ドーアティ(アクセンチュア最高技術責任者(CTO))とH・ジェームズ・ウィルソン(アクセンチュア・リサーチ マネジング・ディレクター)の二人もロボットやAIと人との協業が可能だと述べている。書籍HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキルから二人の言葉を引用する。

さまざまな産業において、AIシステム(物理的な体を持つロボットからソフトウエア・ロボットまで)が人間の仕事を奪うという誤解が蔓延している。確かにロボットカーなどは、タクシーや配達、運輸などの分野で、人間のドライバーを置き換えていくだろう。特定の職業ではそうした現象が起きると考えられる。しかし私たちの研究によって、Alが特定の機能を自動化するために導入されたとしても、その真価は人間の能力を補完・拡張する点にあることが明らかになっている。 (ポール・R・ドーアティ&H・ジェームズ・ウィルソン)

グローバルな鉱業コングロマリットのRio Tinto(リオ・ティント)はAlを使い、中央管理施設から膨大な数のマシン(自動で動くドリルや掘削機、ブルドーザーなど)を管理している。これにより、鉱山の危険な環境で働く人を減らせたのだ。一方で、センサーから得られた情報を分析して、機械をより効率的で安全に運用するという新たな仕事が生まれている。ロボットやAIは人の仕事を減らすのではなく、このうように新たな仕事も生み出しているのだ。

デューク大学のジョーダン・エトキンとウォートン・スクールのキャシー・モジルナーが行った研究によれば、単調な仕事をやり続けるより、多様な仕事をした方が、従業員は幸せを感じ、生産性が高まることがわかった。AIやロボティックスの普及で単調な仕事は、ソフトウエア・ロボットに肩代わりさせることが可能になり、社員が満足感を得られる環境が整ってきた。経営者は社員の幸せを考え、ロボットやAIとの協業を行い、よりクリエイティブな仕事に人を配置するようにすべきだ。人の仕事をクリエイティブなものにし、AIやロボットと協業する場を作ることが優秀な経営者の条件になっていくだろう。

今後は、ロボットやAIと人の力を組み合わせ、生産性を高めた企業が勝ち残っていくはずだ。工場だけでなく、普通の店舗でもAIやロボティックスが採用されはじめている。従業員が単調な仕事からクリエイティブな提案型の業務にシフトすることで、顧客満足が高まり、消費者と企業の関係を変えていく。テクノロジーと人の協業を上手に実行することが企業には求められており、経営者もテクノロジーを無視できなくなっているのだ。

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