進化するデジタルえほんの世界

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去る12月1日に、第6回デジタルえほんアワードの表彰式が行われた。デジタルえほんアワードとは、国際デジタルえほんフェア実行委員会が主催する、「デジタルえほん」という新しいデジタル表現手法の開拓と発展を目的にした国際デジタルえほんフェアの関連事業として設立されたアワードで、子ども向けデジタル表現作品や教材が審査対象となっている。国際とついているように日本以外からも多数応募があり、第6回となる今回は。23カ国・322作品がエントリーしたそうだ。表彰式には海外からも受賞者が駆けつけ、来られない受賞者もビデオレターで受賞の喜びを伝えていた。これだけの作品を集め、各人と連絡を取り、運営を行った事務局に敬意を表したい。
さて、みなさんはデジタルえほんと聞いてどのような作品を思い浮かべるだろうか?単純にタブレットを使った読み聞かせか、知育系のゲームか、はたまたプログラミングの教材だろうか。
今回の受賞作を紹介しつつ、どんどん進化しているデジタルえほんの世界を覗いていこうと思う。

まずはグランプリを受賞した、オーストラリアの作品『Paperbark』。人気の短編小説をゲームのようにしたもので、ウォンバットを操作しながら物語を進めていくのだが、とにかくグラフィックが繊細で美しい。実に王道なデジタルえほんである。
ゲーム会社が開発しているので、主人公であるウォンバットの操作などはゲーム的な感覚に近いが、絵の作り込みは目を見張るものがあり、創造力豊かな子どもであればすぐさま世界観にのめり込むことが出来るだろう。次はどうなるかな?と親子の読み聞かせも出来そうだ。
実際に触ってみると、スムーズでシームレスな動きが気持ちよく、またウォンバットの動きもかわいくて愛着が湧く。ここまで大容量のデータを処理できるパワーをタブレットが備えてきたという点でも、デジタルえほん含めデジタル界隈の進化を感じる。

次に紹介したいのが、デジタル教材賞と一般の部で準グランプリを受賞したイスラエルの作品『My Cells and I』。卒業プロジェクトの一環で学生が制作したもので、非常に面白いデジタルとアナログの融合作品だ。人体をテーマにした作品の絵本の真ん中にスマートフォンをセットし、ページをめくるとスマートフォンのコンテンツが切り替わるというもの。詳しくはこちらの動画をご覧いただきたいが、アナログでは伝えきれない部分をスマートフォンの動画コンテンツで、紙をめくるワクワクやメリハリをアナログで…と、両者の良いところを同時に取り入れている。ともすると難しい科学の分野を、親子で遊びながら学べる素晴らしい作品だ。

アナログとデジタルの融合で気になったのは、AI図鑑の『LINNÉ LENS』『SPRAY PAINTING/デジタル落書き』、福岡市科学館で実施された『スケスケ展-スケると見える仕組みの世界-』だ。どれも日本の作品である。AI図鑑のLINNÉ LENSはスマートフォン用アプリで、水族館や動物園で対象をカメラで認識させると詳細がわかるというそのものズバリAI図鑑。SPRAY PAINTINGは空のスプレー缶とソフトウェアを組み合わせ、スプレーはでないのに実際にスプレーで落書きが出来るようになるもの。日本で1番新しい科学館である福岡市科学館で行われたスケスケ展は、サイトを見てもらえればわかるように、とにかく透けている。アナログの骨格に透過ディスプレイで映像を投影、実際の動きを見せるのは見事だ。

ここであげた作品は、すべてアナログという実際に見てわかる物をデジタルの得意とする部分で補い、もしくは補う以上の働きをしている非常に面白いものだ。これははたしてデジタルえほんなのか?という議論は審査会で議論に上がったそうだが、デジタルえほんとはなにか?という議論が起きたことこそが「デジタルえほん」いう新たな表現領域が成熟してきた証なのではないか、と事務局の石戸奈々子氏もデジタルえほんアワードの挨拶で語っていた。

子どもたちはデジタルネイティブである。TV画面を見たらタブレットと思いタップしてしまう、という話は度々耳にする。こうやって世界中の開発者やクリエイターが子どもたちのための作品を考え、技術の進化と共に表現も進化してきた。子どもたちはそれをすぐに受け入れて楽しむだろう。
そうやって育ってきた子どもたちが、これからどんなものを生み出すのかとても楽しみである。