5Gにまつわるウソとホント

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仕事柄、5Gに関してお話しすることが多い。そして5Gとは当面こんなものですよ、とお伝えすると「それは本当か?」「聞いていた話と全然違う!」「まったく知らなかった…」と驚かれることが、とても多い。そこで、現時点での5Gの状況について、改めてまとめてみようと思う。もちろん現在準備中であり、状況は日々変化している。従って、将来読むであろう未来の読者の皆様は、あくまで本記事は【2018年12月5日版】であることをご理解いただきたい。なお、「5Gとは何か?」という話は、すでにあちこちに記事や解説があるはずなので、ここでは割愛する。

5Gは2019年から日本でも商用サービスが始まるの?

答えは「始まらない」。一部報道で「前倒し」と伝えられているが、少なくとも日本では都市空間での実験がスタートするだけで、商用サービスは2020年からである。
なお、2019年に予定されている実験のうち、少なくとも上期の実験(G20会合会場でのトライアル等)は、端末もまだ実験機である可能性が極めて高い。製品レベルが実際に使えるようになるのは、早くても2019年下期、遅いと2020年になってようやくお目見えするくらいだろう。

5Gは2020年から全国で使えるようになるの?

答えは「おそらくならない」。通信事業者各社の設備投資計画から推察すると、最初は大都市部だけの可能性が極めて高い。さらに言えば、2020年時点では、東京地域、もっと言えばさらにその一部(たとえば山手線内のみ、あるいはオリパラの会場付近)に留まる可能性も否定できない。
では、全国で5Gが使えるようになるのはいつか。それは現時点では分からないのだが、もしかすると「永遠に来ない」可能性もゼロではない。そのため総務省は地方における5G普及に力を入れているが、そう簡単には物事は進まず、全国展開のためには通信産業の抜本的な構造改革が必要になるかもしれない。

5Gは使い勝手がよくなるの?

答えは「当分ならない」。5Gで当初割り当てられる周波数帯は3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯が予定されているが、いずれも直進性が高く減衰もしやすい特性を有しているため、遮蔽物があると電波が通じにくい。特に28GHz帯は、ほぼミリ波帯ともいえる波長の短い周波数帯であり、その特性は物理的に「光」に近づいていく(厳密には、そもそも電波と光は同じものとも言えるが)。ということは、光が窓ガラスやカーテンで遮られるように、あるいは雨が降っている日は(雨や湿気によって光が通りにくくなるため)薄暗く感じるように、電波が一層通じにくくなる。Wi-Fiで2.4GHzと5GHzを比べると、後者の方が使い勝手が悪くなる場合があるのを考えれば、お分かりいただけるだろう。
また電波を伝える方法である「変調方式」も、5Gは高品位だが複雑な変調方式を採用している。そのため、見透しのよい環境で安定的に通信できることが確約されているのであれば、その能力を最大限発揮できる。しかしそうでない環境下では、必ずしも期待通りのパフォーマンスが得られるとは限らない、というよりもかなり難しくなる。
そのため5Gでは、屋外基地局だけでなく、マイクロセルと呼ばれる極小基地局(基地局自体はWi-Fiルータと同じような大きさである)を部屋の中に複数個設置するような方法も準備されている。ただしその場合、正に公衆Wi-Fiがそうであるように、建物のオーナーが基地局や回線の設置を許容することが必要となる。その条件設定や交渉や、まだこれからである。

5Gの普及が始まると4Gはなくなるの?

答えは「なくならない」。それどころか、特に2020年代前半は、最終消費者向けとIoT向けの如何を問わず、しばらくは4Gの天下が続くだろう。
その理由は、前述の通りまず5Gの敷設が容易ではないこと、そしてそれゆえに、端末の開発も簡単ではないであろうことが挙げられる。その一方で4Gは通信事業者各社の設備投資も一巡し、端末や半導体も含めたエコシステムも極めて安定している。従って、利用者からは「安く」、また通信事業者からは「利益率が高く」使えるわけである。それこそ、従来の通信産業の考え方からすれば採算を割っているようにさえ見えるIoT用途向けのLPWAも、4Gの成熟の恩恵を受けているのだ。
また、そもそも通信インフラの世代は、そう簡単には入れ替わらない。5Gのスタートが目前に迫った2018年12月現在、2000年代初頭にスタートした3Gがまだ現役であることが、それを物語っている。

このように書くと、「5Gは全然ダメじゃないか」と思われるかもしれない。確かに、2020年時点では、喧伝されているようなパフォーマンスを享受できる可能性は低い。しかし技術的な性能は4Gよりも明らかに高く、何らかのエコシステムが機能すれば、より使い勝手のいい周波数への移行等も含めて、じわじわと普及が拡大するだろう。
その上で、GASKET的に大事だと考えるのは、「なので5Gを待たずに今からできることをできる環境で進めよう」ということである。特にIoTは、5Gでも大きく期待される分野の一つだが、前述の通り4Gでも(あるいはWi-Fiでも)できることは多いし、その便益をいま享受してこそ、未来のニーズが掘り起こされるというものだ。
5G時代の到来を冷静に見極めつつ、それはそれとして、いまできることを進めていくこと。おそらく5Gが構想する未来も、その先にしか存在しないはずである。

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