【温故知新】JOOSTに期待! これなら日本のテレビ局も受け入れられる【2007年】

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この記事は2007年の6月に、日本経済新聞社のIT-PLUSに筆者が寄稿したものである。11年前と今は何が変わったのか変わっていないのか。以前に書いていた記事の中には、今読み返すといろいろな点で参考になる物が多いので今後いくつかをピックアップしていこうと思う。なお記事本文は当時公開されたもののままで、編集は加えていない。

JOOSTという新しい動画配信サービスが登場した。これまで存在していた技術や機能を旨くまとめ上げたものであるが、JOOSTは変える必要のないビジネスモデルは変えない。この点で私にはテレビ局側からの連携のしやすさという点で一歩リードしているように思える。

JOOSTはインターネットを利用したビデオオンデマンドサービスであり、以下のような機能がある。それぞれはある意味決して新しいものではないが、トータルで非常にバランス良く組み合わされている。まずはその特徴を挙げてみよう。

・P2Pで高画質
何かと悪い印象ばかりが付きまといがちなP2Pであるが、技術そのものは優れたものであり、JOOSTはこういった動画配信ものとしては非常に高画質を実現している。私の自宅のPCは32インチモニターに接続しているがフルスクリーンでの視聴にも耐えられるレベルと言ってもいい。

・RSSリーダーで密度の濃いながら視聴
もともとテレビは視聴者的にはながら視聴が魅力であった。JOOSTにはRSSリーダーが組み込まれていてこれを画面上に半透明で重ねて表示できる。RSSで配信されているニュースやお気に入りのブログ、話題のtwitterの更新状況なども刻々と表示させることが可能だ。テレビ局側がこれを利用しておすすめ番組情報や関連コマースに利用することができる。テレビ画面に対してこれまで以上により密着度の高いながら視聴の実現が可能だ。テレビ関係者は「画面を汚す」などと言うことは言っている場合ではない。むしろ不必要な文字スーパーで自ら画面を汚していることを反省し視聴者にこれを明け渡すべきだ。ニコニコ動画もこの点が受けているに違いない。

・チャットやメッセンジャー
これもまたながら視聴にもってこいだ。同じチャンネルを見ているもの同士による番組チャットができる。といっても番組そのものはオンデマンドで配信されているので同時に同じ画面を見ながらというわけにはいかない。またGoogleTalkとの連携によるインスタントメッセージで会話ができる。こうした視聴者同士のコミュニケーションツールが、それもデザイン的にもスマートに用意されているのでテレビ局側のお題の設定次第で魅力的な場に仕立て上げることができる。

・レコメンド
5つの星の数で番組を採点することができる。シンプルだが視聴率だけではない有効なコンテンツ評価指標となると同時に、こうしたランキングは普遍的な番組宣伝ツールである。当然だが視聴ログは正確に収集できるはずだと思う。

・優れたユーザーインターフェイ
それなのにPCスペックを要求するがデザイン的にも動作的にも軽快で使いやすい。あくまでもPCベースなのでリモコンではなくマウスやキーボードによる操作が前提となっており、ここはテレビとは大きく異なる。

・専用アプリが必要
これは犠牲になる点もあるがJOOSTではメリットのほうが多い。特に公式コンテンツとして著作物を扱う場合において管理はしやすく権利者の理解も得やすい。YouTubeとはこの点で対極にある。YouTubeにおけるメリットはブログにどんどん貼り付けて人に知らせることができるのだがテレビ局には困ったことにここが許し難い。

・視聴制限機能
原権利者を守ると言うよりは、たとえば日本国内ですでに誰かがCS放送やIPTVで配信の権利を有している場合にそれを保護するという部分が大きいようだ。現時点ではいわゆるアダルトコンテンツは配信されていないが年齢認証機能も一応ある。

これならテレビ局が受け入れやすい。こうした特徴はどちらかといえばユーザー側のメリットが多い。しかしこれだけではなくJOOSTの最大の特徴は「コンテンツホルダによる公式コンテンツ」であるのと「広告モデル」という点にある。

テレビ局側から見るとYouTubeのような動画共有サービスには2つの点で許容しがたいものがある。一つは公式コンテンツを出して行くにはオープンすぎると感じる点。アダルト系ブログにタレントの出演シーンをどんどん張られるのは困るのだ。もう一つはCGMという素人の台頭そのものが自らを脅かすのではないかという危機感だ。今のところ何の脅威でもないが将来にわたっての本能的な不快感である。本コラムでもこれらが嫌ならテレビ局自らやるしかないと主張してきた。

JOOSTが広告モデルというのも重要な点だ。テレビ局があくまでも広告モデルにこだわるのは50年間かけて培ってきたものを破壊するのは勇気が必要なのと、有料放送モデルの市場が期待するほど大きくないことを十分に経験してきたからである。

変える必要がないビジネスモデルは変えない
つまりJOOSTは大手広告主の資金によって支えられた良質のコンテンツの制作配信という既存のテレビのビジネスモデルを最初からそのままネットに持ち込もうとしているのである。YouTubeやClip+Slingがテレビ局との連携を模索する中でJOOSTはコカコーラ、P&G、NIKEなどの大手の広告主やVIACOM傘下のCBSやMTVなどの既存のテレビプレイヤーを着実に取り込んでいる。テレビは本当に良くできたビジネスモデルだ。無理にそれを根底から変える必要はない。必要な機能を取り込めばよいのであってJOOSTは現実的なテレビの未来であるといえよう。

言葉でいくら説明するよりも百聞は一見にしかず。JOOSTは現在のところ招待制になっているが、テレビ関係者にこそ是非とも試してみて欲しいサービスだ。JOOST的なものならどうにか使えると感じていただけるのではないだろうか。

 

(本稿は2009年6月に日経IT PLUSに寄稿した記事です。)

追記:初出時の写真がすでに手元なく、オリジナル記事はすでに閲覧できないので。テキストのみの構成であることをご容赦願いたい。写真も含めたJOOSTの詳細はこちらの記事が詳しい。

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