ICO規制の落としどころ

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日本の一般のサラリーマン、OLが、ニューヨーク証券取引所のIPO銘柄に投資することはちょっとハードルが高いが、ICOのポータルサイトにアクセスして、面白そうなビジネスプランに、ちょこっと手持ちのbitcoinを投げてみた・・・などということはそれほど抵抗がないだろう。ICOが健全な資金調達手段、そして投資活動となるための「縛り」はどの程度が適切だろうか。

金融庁は、本年3月、仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について制度的な対応を検討を行うため、「仮想通貨交換業等に関する研究会」を立ち上げ、継続して議論を重ねている。過去10回ほどの主な議題は、仮想通貨(筆者は「暗号通貨」が適切な日本語訳だと信ずるところだが、法令の定めが「仮想通貨」とされている)をめぐる諸課題の認識、ブロックチェーンの技術的動向の把握、仮想通貨交換業に対する規制や監視そして、ICO(Initial Coin Offering)の規制だ。

 

*ICO規制についての主な検討事項 ~既存の資金調達方法との比較~

伝統的なIPO TOKYO PRO
Market方式
投資型クラウドファンディング(CF) 集団投資
スキーム
事務取扱者/
販売者
証券会社 J-Adviser 第1種少額電子募集
取扱業者等
第2種
金融取引業者
流通の場
の提供者
金融商品取引所 証券取引所
(プロ向け市場)
証券会社
(勧誘禁止)
事業・財務状況
の精査
幹事証券会社審査
会計監査
J-Adviser審査
会計監査
CF仲介業者
による審査
無し
発行価格
の設定
ブックビルディング 第三者の評価額算定 CF仲介業者
による適当性審査
無し
発行開示等 届出書の公衆縦覧
目論見書の交付
特定証券情報の公表 CF仲介業者
による事実公表
契約締結前
交付書面の交付
流通の場を
通じた規律
金融商品取引所
証券会社の店頭
プロ向け市場
証券会社店頭
証券会社店頭
不公正取引規制 インサイダー
取引規制等
インサイダー取引規制等 不正行為禁止
風説の流布等禁止
不正行為禁止
風説の流布等禁止
継続開示等 有報の公衆縦覧
適時開示
発行者情報の公表
適時開示
事業情報の
定期的情報提供
原則なし

(以上、2018年11月1日に開催された研究会の参考資料より抜粋)

 

ICO規制はおそらく現行のいくつかの資金調達手段に対する法制度を参考に、必要なアレンジを加えたものとなるであろう。詐欺的行為を防ぐ一方で、健全な資金調達手段とするために、過度な規制とならないラインはどの辺だろうか?

 

筆者の考えでは、投資型クラウドファンディングの方法のアレンジが最も近道ではないかと感じる。それは、ICOによる資金調達には、一般に以下の特徴があるからだ。

(1)インターネット上での開示、取引を前提としている

(2)今までにないビジネスプランに対しての投資を求める/一定のリスクを投資家に求める

(3)蓄積財産、内部統制整備といった評価対象自体が無い超アーリーステージにいる

(4)幅広い一般個人投資家からの「応援的な」出資を期待

これらの特徴は、投資型クラウドファンディングを行う趣旨・企業に比較的共通する点が多く、現行制度において比較的ゆるやかながら一定の事前スクリーニング、継続開示を施している点もバランスがいい。アレンジ、整備すべき点は、募集額上限の引き上げやトークン内容の制限、株主との権利差異の明確化、株式との交換のルールといったところだろうか。

ICOに対しては、まだまだネガティブなイメージが強く、日本国内では数社が実現したにすぎない。抵抗はあってもやはり「お上」が決めてくれた方がスムーズにコトは進む日本。早期の法令整備により、健全な資金調達と投資による支援が促されることを大いに期待したい。

ところで、通常の通貨で資金調達行う場合、外国為替(投資家にとっても、集める側にとっても)や国によっては出資制限、資金異動規制等の壁があるため、調達した資金を費消する国以外の通貨を集めるのは、特にベンチャー企業にとっては非現実的だ。日本国内法人が集めるのは日本円、主に日本の投資家から日本の取引所を通じIPOする。という図式が一般的だ。しかしICOの場合は、そういった為替や資金移動に関する壁がかなり低い。

仮にICOの法規制が厳しい場合、規制の緩やかな他国に現地法人を設立し、持株会社的な役割を果たさせればよいことになる。海外親会社が集めたEthereumも、日本国内の会社が集めたEthereum も日本円に「両替」するコストは同じだ。(仕入先がEthereumでの支払いを受け入れてくれればそのコストもクリアされる) 従って、個々の国家によるICO規制は骨抜きにされる可能性もあり、今後、各国の法規制の差異、そして国家間の連携にも注視したいところだ。

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