ニューヨークの街角設置のデジタルサイネージ「LinkNYC」

Digital Signage /

街角に設置された案内機能を持ったデジタルサイネージとしては、機能も台数もずば抜けて多いのがニューヨークに設置されているLinkNYCだ。3rdアベニューから導入が始まり、2028年までにニューヨークエリアの歩道上に、120メートル間隔で7,500台が設置予定とされ、総工費は2億ドルだという。

LinkNYCは2016年1月に開始した。筆者が翌月の2月に最初の訪問をしたときには稼働数はまだ数十台であった。その後に10月に再訪し、さらに1年後の2017年11月に3回目の現場チェックを行っている。

LinkNYCの主な機能は以下の通りである。
・ギガビットフリーWi-Fi
・全米内無料公衆電話
・緊急電話911
・簡単な旅行案内、イベント案内
・WEBブラウジング
・マップ(Google Map)
・USB充電器

では現場からの動画で全体を把握していただこう。これは2016年の10月に53丁目あたりで撮影したものである。

運用は基本的に広告費で賄われる。筐体は完全屋外設置で、高さ3メートルほどのジュラルミン製であり、極めて頑丈である。自然換気のみでエアコンはない。電源もネットワーク回線も全て地下から供給されており、筐体デザインは非常にスッキリとまとまっている。設置場所は基本的にもともと公衆電話が設置されていた場所である。ニューヨークでも言うまでもなく、携帯電話の普及によって公衆電話は激減してしまった。これによって911、日本で言う110や119などへの通報に支障がないわけではない。それもあって公衆電話跡地が選ばれた経緯もあるようだ。

55インチLCDには赤外線カット用フィルターのシートが貼られている。ディスプレイに直射日光が当たる場合にはLCDの黒化現象が気になる。これもあって2月の後に真夏を経過した状況を確認にでかけたのであるが、結果は問題なく表示されていた。ディスプレイ輝度は1000から1500カンデラ程度と思われ、直射日光が当たった状態でも視認性は保たれている。

上部のLCDは広告を表示するのみで、タッチ操作はAndroidタブレットが筐体の歩道側側面に組み込まれている。ここでタッチした結果の表示はLCDに表示されることはない。また全米無料通話のために自分のイヤホンやヘッドセットを接続することも可能である。また接続されているギガビットWi-Fiはなかなか高速で、筆者が試したところ100メガ以上の速度が出ていた。足回りの回線は、このためにあらにギガビットネットワークを敷設しているとのことだ。

設置場所と稼働状態は、リアルタイムでLinkNYCのWEBから確認できる。現在は1737台が稼働中で、設置エリアもマンハッタンからクイーンズ、ブルックリン、さらにスタッテンアイランドまで拡大している。

広域の設置状況
マンハッタン中心部の設置状況

3回訪問して共通であるが、タッチして利用している人は少ない。Wi-Fiは立ち止まって接続している人がまばらに見られる。LinkNYCでは、観光情報の提供はさほど重視されておらず、既存のNYC311というニューヨーク市が運営しているイエローページサイトが表示される。このリンクをスマホで見ていただいたものがLinkNYCにそのまま表示される。レスポンシブルページなのでパソコンで見るとそれに最適化された表示となる。これらは観光客向けのサービスというよりもどちらかというと住民向けのサービスという位置づけのようである。多言語対応はなく、英語オンリーである。

運用費を広告で賄うためには、面数と視認性が重要なポイントだ。広告用のディスプレイは比較的高い場所に設置されているので、歩道側からも車道側からも視認性は極めて良好である。それだけ広告媒体としての価値が高いということになり、広告費を多く得ることができ、それで運用費をまかなえるのではないだろうか。

上部にカメラが設置されている

さらによく見ると、広告用のディスプレイの上部にはカメラが搭載されている。このカメラは、その設置位置からして視聴者属性を識別するものではなく監視カメラとして機能していると思われる。マンハッタンに120m間隠で設置されることで防犯機能が強化され、これによって警備警戒コストが削減できる。ただし、2回目の訪問以降ではこのカメラの部分に紙テープなどが貼られている例をよく見かけた。

日本の案内サイネージとは異なり、案内部分は安価なタブレットでWEBをそのまま見せる。それよりも社会インフラとしてデジタルサイネージを考える。そして運営費は極力広告費で賄う。そのためためには一定量以上の規模が必要。正しい考え方だと思うのだがいかがだろうか。それもこれもロケーションとして歩道を利用できる行政がなせる技であり、デジタルサイネージは基本ロケーションビジネスであることを示していると見るべきだろう。

Tags: