サブスクリプション・モデルの本質

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サブスクリプション・モデルが顧客から支持され、勝ち組と負け組を二分する理由になっている。当初はSpotifyやNetflixなどのコンテンツ業界での動きだったが、最近は多くの業界がサブスクリプションにトライし、顧客を囲い込もうとしている。

Netflixはオリジナル・コンテンツの制作に多大な予算を投下している。膨大な制作費が彼らの経営を圧迫すると批判されているが、彼らはそれを気にすることなく、世界中に顧客を広げている。第2四半期の新規会員数の伸びは鈍化しているが、それでも世界中で1億3000万人の加入者を実現し、今期は160億ドルの売上を確保しそうだ。この会員基盤が彼らの収益を支えており、Netflixの会員を喜ばせることが彼らの経営目標になっているのだ。

Netflixは「GLOWゴージャス・レディ・オブ・レスリング」や「ゴッドレス神の消えた町」といったドラマの新シーズンに約5000万~6000万ドルの制作費を投入している。彼らは、新しい加入者を獲得し、現在の加入者の契約を継続させるために、優良なコンテンツを制作している。一度制作した番組は未来にも価値を持ち続け、Netflixの魅力になるのだ。新しいオリジナルコンテンツは新規顧客の獲得コストを引き下げると同時に、既存顧客の生涯価値を高めている。

NETFLIXは徹底的の顧客データを分析し、加入者ごとに、投資した金額を回収するためにどのくらいの時間がかかるかを算出している。長期的に利益をあげるために、短期的な支出には糸目はつけずに、顧客を喜ばすことを優先する経営が、彼らの成長を支えているのだ。

YouTube、Disney、Apple、Amazonなど競合がそれぞれの独自コンテンツを提供する中で、彼らは顧客の興味関心をデータで分析し、良質なコンテンツを提供し、彼らと共存しようとしている。GAFAとの戦いに負けないためにも、新しく魅力的なコンテンツを制作することが生き残りの条件になっている。

自動車にも広がるサブスクリプション・モデル

サブスクリプション・モデルは、顧客の時間をお金に変えるビジネスモデルだとも言い換えられる。最近ではトヨタがこのモデルを採用すると発表した。毎月定額を支払えば、複数の車種を2~3年ごとに乗り換えることができるトヨタのプランのようだ。税金や保険、車両メンテナンスなどは会費に含まれ、月額定額でレクサスなどの高級車も楽しめるようになる。

これまでのリースとは異なり、サブスクリプション・モデルではさまざまな車種にトライできるのだ。また、サブスクリプション・モデルでは、顧客は登録や税金、保守などの面倒な作業から解放される。一足先に始まったアメリカのポポルシェのカー・サブスクリプションでは、月ごとでの契約が可能で、車に乗りたい時期のみの契約もできるようになっている。

面倒な車のメンテナンスは、今後自動車メーカーの仕事になり、顧客はそれを気にしなくてよくなる。車の維持コストは誰もが支払いたくないし、面倒だと感じているはずだ。たただでさえ、人気がなくなった車を若い人に使わせるためには、こういったハードルをなくしていく必要があると自動車メーカーも気づき始めた。巨人トヨタも顧客を満足させる必要から、サブスクリプション・モデルを採用したのだ。車を選択しない世代に運転する魅力を伝えないと、トヨタですらジリ貧になっていくと彼らは危機感を持っている。製品から発想するのをやめ、顧客から発想しなければ、トヨタですら生き残れない時代が到来している。

UberやLyftがトライする新たなサブスクリプション・モデルとは?

そして、Uberもいくつかの都市で定額制のサブスクリプション・サービスをスタートした。顧客は毎月決まった利用料を払うことで、超過料金なしの割引料金で移動できるようになった。Uberは顧客から選ばれ、長期的な収益を確保するために動きを加速した。

アマゾンプライムの会員は、知らず知らずのうちに、Amazonに時間を支配されいる。無料配送サービス、音楽、映画、Echo、リアル店舗での買い物など多くのタッチポイントで、Amazonを選択している。

このUberや同業のLyftもAmazon同様にロックインを行おうとしている。その方法は顧客の日常的な消費行動のタッチポイントに料金割引サービスを組み込もむことだ。UberやLyftを使う移動ルート上ごとに別のサービスを提供し、顧客の満足度を高めようとするはずだ。車内でコーヒーを飲ませたり、コンテンツを見せるなど乗車時の顧客体験をアップし、サービスを固定化してくるだろう。UberやLyftは新たなサブスクリションモデルの会員に、様々なサービスを提供し、顧客満足をはかりながら、収益を上げようとしているのだ。顧客の時間を自社に使わせ、競合への時間を減らす恐ろしビジネスモデルを考えている。マーケティングでは顧客時間を考えることが重要となり、サブスクリプション・モデルがその基盤になっている。

サブスクリプション・モデルを単なる課金モデルと捉えると本質を見失ってしまう。顧客が望むことを提供する企業が、顧客の情報を様々なタッチポイントから入手し、サービスをどんどん進化させていく。VOCを分析し、顧客体験を高めるサブスクライバーがこれからの勝ち組になるはずだ。

参考図書 サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
ティエン・ツォ, ゲイブ・ワイザート著
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