株式会社とNPO、社会貢献事業に適するのは?

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株式会社はお金儲けの組織?

かつて株式会社は「営利企業」と呼ばれたが、この言葉が使われなくなって久しい。
企業の目的が「お金儲け」といまだに思っている人も少なくない。
しかし、企業の目的は、本来、定款に書かれている「目的事項」。
「何をやって役立つか」ということ。
お客様に役立たなければ買っていただけないから、事業にならない。
「誰の何のニーズにどう応えるか」というのが、企業の目的であることは明白である。
では「お金儲け」をしてはいけないかというとそうではない。
利益はドラッカーも言う通り、目的ではなく企業が持続して目的を達成するための手段。
「お金儲け」は企業が社会に役立つために必要なのである。

株式会社の原点。大井川鉄道

世界で唯一、機関車トーマスの実物が普通に街中の踏切を通過する静岡県島田市。運営するのは大井川鐡道株式会社
その昔、この会社が設立された目的は大井川上流で伐採する木を運ぶため。
そして地域の住民の生活の足として。
設立当時の発起人には地元の有力者が名を連ね、沿線の住民が多く株主として出資した。
皆が出資をしたのは、株を売って儲けるためでも、配当が欲しいからでもない。
地域の社会に必要だから。

線路を敷いて蒸気機関車を買ってきて、1925年に開業した大井川鉄道。
経営者を雇ってスタートしたこの会社の目的も、「お金儲け」ではない。
それは、地域の交通を担うこと。
しかし、「利益」は、鉄道事業を持続するために、必要であることは言うまでもない。
鉄道収益から得られた総利益は、鉄道事業に従事する役員と従業員に給与として分配される。鉄道を維持するために必要な経費もこの利益から支払われる。その後に残った営業利益から税金が支払われ、その残りが地域の株主に配当として分配される。
株主に分配して残った剰余金は、持続的に発展するために必要な将来の投資のためにとっておく。SLを観光目的の利用客の目玉とした大井川鐡道。
機関車と機関車トーマスの権利に投資を行っている。

NPOは本当にお金を儲けていない?

Non Profit Organization(非営利企業)の名の通り、NPOは「利益」を目的としない組織とされている。
米国の公共ラジオ、National Public Radio.
各州にそれぞれ地域のPublic Radioのネットワークを張りめぐらし、今では世界中にネットでニュース番組と音楽番組を配信している。
このNPO、ちゃんと役員と従業員が働いていて給与をもらっている。
その収益はリスナーからの寄付と企業からの協賛。
形は寄付だが、視聴料や広告料と実体は変わらない。
その収益で番組を制作し、人件費を支払う。
残った利益の分配が違うだけ。
株主はいないから、分配はない。
利益がない建前だから税金は支払わない。
しかし、持続的発展のために利益が必要なことは株式会社と変わらない。

NPOでも株式会社でも起きる不正事件

NPOにはいわゆるNPO法人(特定非営利活動法人)のほか、公益社団法人や公益財団法人、学校法人や宗教法人も広い意味ではNPOである。
日本では監督官庁が監督しているのが特徴だ。
役所が視ているから大丈夫かと思えばそうでもない。
2009年に発生した漢検事件。
公益財団法人の日本漢字能力検定協会の不正資金流用事件である。
公益法人でありながら「儲かって」しまったお金が結局、理事長の個人会社に流れていた。
監督官庁の文科省を責めても仕方がない。
所詮、役所が監督するには限界がある。
これが株式会社であったらどうであろう。
外部株主が参加する公開会社であれば、企業統治(ガバナンス)の体制が求めらる。
株式会社であったら、中長期的な視点で「漢字検定」を発展させるべく資金の使い道を見出していたかもしれない。
もちろん株式会社のガバナンスが万全といっているわけではない。
短期利益志向の株主が多ければ、配当への圧力が高まる。
オーナー社長がシェアの大半を握っている会社では、利益の使い道はオーナーの気持ち次第。過度な利益追求の結果、品質データ改ざん等の不正に走る企業のニュースも後を絶たたない。

株主による企業統治(ガバナンス)が株式会社の特徴

本来、適切な社会のニーズに応えている会社は全て、事業を通じて社会貢献をしている。
長期に成長発展している会社の多くは、社会の公器として株式を公開し、株主によるガバナンスが正しく働いている会社となっているようである。
初期の大井川鐡道がそうであったように、株主の多くにとって、株式は売買目的の金融商品ではない。
NPOには真似のできない、株主によるガバナンスが可能な株式会社。
上場している大企業だけの話ではない。
中小企業であっても株式型クラウドファンディングを活用する道がある。
米国ではFamily & Friendと呼ばれる縁故募集。
身近なファンが株主になり、社会の公器たる公開企業として事業の発展につなげる。
是非、多くの中小企業が自分のための会社から脱却し、公開企業の道を選んで欲しい。