国内環境でのICO(Initial Coin Offering、仮想通貨の新規公開)はまだまだ難しいものの、株式投資型のクラウドファンディングやコーポレートベンチャーキャピタルファンドなど、デフレ、カネ余りの経済情勢を反映して、様々な資金調達手段があふれているが、ここでは「伝統的」な証券取引所への株式上場(Initial Public Offering)による資金調達について、今年の実績をまとめてみた。
新規上場会社数
東証1部 | 東証2部 | マザーズ | JASDAQ | TOKYOPRO | 計 |
5社 | 4 | 50 | 10 | 7社 | 76社 |
上場時資金調達額(TOKYO PRO Market除く/公募・売出合計)
~5億円 | ~10億円 | ~20億円 | ~50億円 | ~100億円 | ~500億円 | 500億円超 | 計 |
6社 | 24 | 18 | 10 | 3 | 7 | 1 | 69社、4,015億円 |
主な資金使途(重複回答あり)
区分 | 内訳 | 対象数 |
運転資金 | 人件費/人材確保 | 36社 |
広告宣伝/販促費 | 16 | |
事業用不動産仕入 | 5 | |
他 | 12 | |
投資 | 情報システム関連 | 31 |
不動産/設備 | 31 | |
研究開発 | 9 | |
子会社等 | 11 | |
債務償還 | 短・長期借入金/社債 | 22 |
他 | 4 |
(㈱日本取引所グループ及び発行会社が開示する資料より抽出)
以上は、10月30日までの実績をとりまとめたものである。おそらく年末までにあと十数社の上場が予想されるので、結果として90社前後になるものと思われるが、東証マザーズの人気が相変わらず高い一方、地方市場(札幌、名古屋、福岡)は単独上場銘柄が生まれていない(年内に札幌で1件あるとの予想)。
上場時の資金調達額は数億円から数十億円といったところがメインのレンジである。 主な調達資金の使途をみると、やはり増加する「人件費」「人材確保」、そして「情報システム投資」が多く見受けられる。一方で、この低金利時代においても、「有利子負債償還」を掲げている会社も多く存在するのが意外に思える。さらには研究開発投資が少ないのは、やや寂しく思える。皆様はどうお感じだろうか。
さて、2017年の新規上場会社は90社、資金調達総額は4,589億円(公募・売出合計)であったことから比較すると、会社数はやや減少、調達額は概ね同等と言いたいところであるが、「あれ?あそこはどうなったんだっけ?」とお気づきの方もいらっしゃるだろう。
そう、ソフトバンクグループの御曹司「ソフトバンク株式会社」だ。年初の憶測記事からスタートして今月には承認か・・・と言い続けられており、本記事掲載直後にも上場承認される可能性がある。同社の上場が実現すると、調達額は2兆円とも3兆円とも言われ、2015年の日本郵政グループを超えて過去最大の規模だ。11月半ばあたりまでに上場承認されれば、年内に上場実現も可能。そうなればもちろん、1社で他の2018年全上場会社の調達額を軽く上回ることとなり、証券金融業界にとってはまさにビッグなクリスマスプレゼントとなる。ただ、ここにきて米中貿易戦争を起因として株式相場が下落気味であることに加え、10月に発生したサウジアラビアによるジャーナリスト殺害事件が思わぬ影を落としている。果たして予定通り年内に上場が実現されるだろうか。