サイネージやスマホを取り入れた「サインシステム」が必要ではないか

Digital Signage /

東京に在住の人であれば、赤い丸と青い丸を見れば、東京メトロの丸ノ内線と東西線を思い浮かべ、地下鉄で出口を探すときは、自然と黄色い看板に目をやるのではないだろうか。

1975年、東京メトロの前身である営団地下鉄では、駅構内の案内をわかりやすくするために、案内サインの一新を決断し、そこで発明されたのが、路線ごとに色付けされたシンボルマークや、出口を案内する黄色い看板である。いまでは深く浸透したサインデザインである。

このサインがわかりやすく、受け入れられたのは、個々のクリエイティブが優れていたこと以上に、地上から駅に入り、降車後に目的の出口に到達するまでの一連の流れのなかで、どの場所でどのような情報が必要になるのかを整理し、それに基づいてサインが設置されていたためだ。

赤瀬達三著『駅をデザインする』から サインシステム・フローチャート

利用者は、地上で地下鉄の駅を見つけたのち、方向指示サインの矢印に従って進めば、乗りたい路線の改札に到達し、下車後には目的地が書かれた黄色い看板を追えば最寄りの出口から外に出られる。その動線の途中には、路線図や駅周辺地図などの図解サインが設置されており、空間と座標を理解できるようになっている。サインを個々ではなく、システムとして捉え、利用者の動線を乗車系と降車系に分類してそれぞれで必要とする案内を最適な場所に配置した「サインシステム」は、公共施設における案内の模範的な事例として高く評価され、さまざまなところで模倣されてきた。いまでもサイン計画を考えるうえでのベースとなっている。

しかし、営団地下鉄がこのサインシステムを取り入れてから約40年が経過し、その間に状況は大きく変化している。

まず、駅は公共交通機関の結節点としての機能だけでなく駅ナカ施設を抱えるなどの複合的な役割を担うようになったほか、国際化による多言語化で伝えるべき情報は爆発的に増えている。そして、ソリューションも、サインはアナログで固定的なものしかなかったのが、デジタルサイネージによって可変表示ができるようになったほか、スマートフォンが普及したことで、乗換案内や時刻表などの情報を個人で取得できるようになった。さらに近年ではセンサーやカメラから情報を取得し、混雑具合などの状況判断を行ってそれに合わせた案内も可能になっている。

これまでも、そのような変化に対応するため、運行状況を案内するサイネージや多言語案内を行うタッチパネル端末が設置されたり、運行状況や駅構内を案内するスマートフォンアプリが提供されたりするなど、さまざまな施策が取られてきた。しかし、残念なことに、営団地下鉄のサインシステムのような全体像を描くことなく、個別最適化で実施されている。これでは、たとえ個々の技術がすばらしくても効果は限定的になってしまう。

営団地下鉄のサインシステム導入のときのように、案内のあり方を抜本的に考え直すべき時期がきていると思うのだが……。