ブロックチェーンを利用した映像配信プラットフォーム「Livepeer」はオープンソース

Blockchain/Media /

GASKETでは放送映像業界の方々向けに、ブロックチェーンの様々な情報を紹介していきたいと考えている。今回はそもそもブロックチェーンとは何なのかを超シンプルにまとめた上で、これを実践しようとしているニューヨークのスタートアップベンチャーLivepeerを紹介してみたい。

ブロックチェーンは放送・映像業界には正直馴染みのない、あるいはよくわからない、関係ないと思われがちである。いったいどういうものなのかを簡単におさらいしておこう。私達はMPEGのような技術をまったく理解していなくても、撮影も編集も、テレビやYouTubeで映像を楽しむことができる。インターネットをほとんど意識すること無く使って生活をしているのも同様である。ブロックチェーンに関しても、その仕組みや技術を深く理解しないと使えないということは決してないのだが、アウトラインは掴んでおいたほうが腑に落ちやすい。

ブロックチェーンの話の前に、おさらいとして、最近のネットワーク構成でよく聞くクライアント・サーバー型と、P2P型のネットワークの比較をしておく。クライアント・サーバー型とは中央集権型のネットワークで、データを一括管理するサーバーと、それにアクセスするクライアントで構成される。クライアント・サーバー型では、中央の1台(実際には多重化されているが概念としては1台である)のサーバーがデータを一括管理している。このためサーバーがダウンしたり、システムに不具合が生じたらネットワーク全体が利用できなくなる。

一方、P2P型とは「Peer to Peer」の略称で、ネットワークに参加している端末間を直接つなげた技術のことであり、それぞれの参加者がネットワークで共有されているデータを保有している。P2Pといえば金子勇氏(故人)が開発したWhinnyがP2Pベースのシステムであったが、その利用のされ方に問題があっただけにも関わらず、技術自体が否定されかかったという悲しい歴史がある。包丁で人を刺したら包丁製造者に責任があるのかと言った単純な議論であるにもかかわらず、である。

要するにブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは、ネットワークの構成としてはP2P型のネットワークであり、P2Pネットワーク上でのトランザクションをほぼリアルタイムで時系列に記録する、変更不可能で、中央集権型ではない、分散型のデータベース(デジタル台帳)である。台帳に新たなトランザクション(追加や変更)を追加するには、その都度ネットワーク全参加者の同意が必須であり、これによって、操作、エラー、データ品質の管理を連続的に行う仕組みができあがる。

ブロックチェーンの特色と優位性をシンプルにまとめると、
・誰でもサーバーを立てられるオープンな形のP2P型のデータベースであること。
・データベース上の変更を多数決によって解決すること。
・同じデータを2人以上に渡せない(二重譲渡)こと。(後のトランザクションが無効)
というところに尽きる。

ここでブロックチェーンの技術を更に詳細に語るためには、ハッシュ値、ナンス、マイニングという物を知る必要があるが、それなりに難解なので別に理解していなくてもいいと思う。筆者も技術者ではないのでどこまで正しく理解しているのか極めて怪しい。ただ往々にして技術を精緻に極めていくと、ビジネス上のチャンスを逸することも少なくない。ブロックチェーンのビジネス応用、特に映像関連領域に関して技術者は冷静だが、ビジネスピープルだけが騒いでいる、という指摘は否定するものではなく、それでも少しでもメリットが有るならビジネス化して、技術が追いつけばいいだけのことである。ハッシュ値、ナンス、マイニングについての詳細を知りたい方はこちらのサイトが比較的簡便に記載している。

ブロックチェーンの暗号通貨以外の応用に関しては、技術的な課題は多いと思われるが、その可能性は非常に大きい。ちなみに暗号通貨としてのビットコインは、「ブロックチェーン技術を応用したアプリケーションの一つ」でしかない。これは「インターネット技術を利用したアプリケーションの一つがWEBである」と同じ話くらいの理解で十分だと思う。ということは、「ブロックチェーン技術を使って動画に関連するビジネスする」とうことがあり得るのではないかと想像ができる。そして実際にそうした試みをひとつ挙げてみる。

Livepeerはイーサリアムブロックチェーンによって開発された

Livepeerはニューヨークのスタートアップベンチャーである。ブロックチェーンを利用してインターネット経由でビデオを配信できる技術である。LivepeerはEthereum(イーサリアム=多数あるブロックチェーンプラットフォームの一つ)上に分散化されて構築されており、 Livepeerネットワークを運営する会社は一社もない。Livepeerを利用するすべてのユーザーがプラットフォームの一部となり、ネットワーク上でオーナーとなる。LIvepeerのユーザーはサービスを利用する「ユーザー」、動画を配信する「ブロードキャスター」、サービスを開発する「デベロッパー」の3つに分類される。

Livepeerビデオインフラとネットワークを構成するすべてのコードはオープンソースであるので、誰でもLivepeerの上に必要なものを構築や投稿することができる。
「ユーザー」の視聴料の支払い、「ブロードキャスター」や「デベロッパー」の報酬はすべてLivepeer Token(LPT)という暗号トークンが利用される。このLPTは、Ethereumが取引上の改ざんや不正行為がないことを証明する。LPTを、最終的にどこかの国の法定通貨と交換する場所が例えばbitFlyerのような取引所である。

これまでは、インターネット経由でビデオ配信したい場合は、AWSやBrightcoveのような配信サーバーや帯域を提供する会社に利用料を支払うか、一定のマーケティング情報の提供や広告配信と引き換えに、YouTubeやFacebookのような無料のソーシャルネットワークを利用していた。Livepeerのケースではこうした中央集権的な企業は存在しない。

Livepeer上で「ブロードキャスター」や「デベロッパー」が配信環境を提供して報酬を得るためには、最も効率的なハードウェアやソフトウェアを構築し、最も安い電力と帯域幅を使用してネットワークにサービスを提供することによって、利益の最大化を試みるところがビジネスとしての競争部分である。繰り返すがこれらはすべてオープンソースであり、「ユーザー」、「ブロードキャスター」、「デベロッパー」それぞれが独自のユーザーエクスペリエンスと収益をコントロールできることが可能になる。

F.Y.I.   Livepeer Whitepaper

Livepeerはまだ開発途上であり、実際にサービス開始できるかはわからない。他にも映像系でブロックチェーンを扱っている企業は、筆者が把握しているだけでも30社を超えている。その多くはスタートアップベンチャーである。こうした例をできるだけ集会していきたい。仮想通貨バブルが一巡したこれからこそ、本当に挑戦が始まるのだと思うのである。