高臨場感時代の音と映像の表現手法の再定義

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長い長い文字の時代(小説や脚本)から、はじめて映像が登場したとき、私達の大先輩は、どうやって映像表現をするべきなのかを徹底的に考えたはずである。例えばカット割りとか、ズームやパンといったカメラワーク技法は、モノクロや低解像度で、映像の表現力がとても低い時代に、心象を表現するために彼らが編み出した技法であり、それが映画を中心として、文化芸術の域まで達したわけである。その時代は延々と100年ほど続いてきた。モノクロからカラー、フイルムからビデオ、SD→HD→4K→8Kという一連の流れは、技術の正常進化でしかなく、表現技法自体は何も変わることはなかったといえる。

ところが、VRや超高解像度の映像、360度のHMDやスクリーンはそうではない。360度や奥行き感を表現できるということは、いままでにない臨場感や体験や体感を私達にもたらす。そしてそれは360度映像という点だけに注目してはいけない。

人間の視覚は、なぜか360度の視野角を持っていない。進化の過程で、後頭部に目をもう一つ付けなかったことにはきっと何か理由があるはずだ。一方、聴覚は360度をカバーしている。これは外敵から身を守るためには、音が優先される必要があるからではないだろうか。地球上では空気がある限り、近寄ってくる敵は必ず音を伴うからだ。また視覚は夜間に使い物にならないが、聴覚なら問題なく機能する。つまり我々には音が重要なのである。

VRや超高解像度映像の世界においては、とかく音が蔑ろにされがちである。「音のVR」というと誤解を受けそうだが、こうした音の重要性と、高臨場感映像における最適な映像演出について私達はまだまだ何も見出せていないのではない。

こんなテーマのパネルディスカッションを11月16日(金)13時から、幕張メッセで開催されるINTERBEE IGNITIONで行う。パネリストはVRミュージカルというトライアルを続けている、アルファコードの水野 托宏氏とミュージカルに演者として参加している音楽座ニュージカルの俳優/プロデューサーの森 彩香 氏、そして北京オリンピックや上海万博で音楽制作を担当したサウンド・アーキテクト/作曲家の大黒 淳一氏である。

映像制作現場では、音を扱うのは映像より遥かに難しく、感覚的である。再生視聴環境としても、たくさんのスピーカーを設置して大音量で鳴らすことができる場所は限られる。しかし12月に有楽町マリオンにオープンする、大黒氏も参加しているPLANETARIA TOKYOなどの施設や、ライブビューイングできる施設が今後続々とオープンする。このタイミングであるからこそ、高臨場感時代の音と映像の表現手法の再定義を行ってみたい。