楽天技術研究所の「遠隔スタイリング支援システム」は買い物と働き方の両方を変える

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楽天技術研究所の遠隔スタイリング支援システムが更にパワーアップした。この仕組みは、バーチャルスタイリングラボとして実証実験を行ったものの進化版である。CEATEC2018でのデモの様子を報告する。

今回は、e-zakkamania storesとのコラボレーションで、実際の店舗に来店した顧客が、店舗とは異なる場所にいるスタイリストとリアルタイムで会話しながら、ファッションコーディネートやアドバイスを受けながら買い物をする。店舗側には等身大に表示されるディスプレイがあり、着せ替え的にさまざまなアイテムを自分の画像に重ね合わせてくれる。アイテムの選択や貼り付ける作業はスタイリスト側で行う。

以前のバージョンとの相違点は、顧客からはスタイリストは声しか聴こえなかったのだが、写真のように今回の場合はうさぎのキャラクターとして画面に登場する。それもなんとも言えない崩し方というか、ユルさというか絶妙なテイストである。スタイリストの声は、以前と同様に生声ではなく、ロボットボイスに加工されている。これによって顧客とスタイリストの間にやはり絶妙な距離感が生まれる。生声では生々しすぎるのである。

また今回はスタイリスト側は、顧客の様子をHMDで見ている。さらに、アイテムはWEB上の平面的なものから選ぶのではなく、実はスタイリストはVR店舗の中で接客している。HMDゴーグルを装着して、実際に立って接客を行い、アイテムは店舗を模したVR空間から手で取って顧客に貼り付けてコーディネートを行う。

つまり顧客はこれまでのオンライン店舗ではできない購買体験を店舗で得られ、接客側は実店舗に近い接客を遠隔地で行う。これらを映像と音声でつなぎ、必要に応じてVRも利用する。コミュニケーションの距離感が最適になるように、音声を変えたり、アバターに変えているのである。

こうしたコミュニケーションの距離感が重要だ。4K8KやVRをそのまま使えば、現場にいるような臨場感を得ながら買い物や接客ができる。しかしそれでは生々しすぎるのである。リアル店舗で店員にあれこれ話しかけられるのは鬱陶しい、そんな経験は誰にでもある。かといっていつも放置されても相談したいときには不便である。とくにファッション系などは客観基準などは存在しないので、人の意見は重要な購買決定のために要素である。複数店舗を展開しているような場合にスタイリストを効率的に活用できる。

この事例を実際に現場で見ると、リアルタイム感と絶妙な距離感ということがとても重要であることが分かる。貼り付けられるアイテムが2次元ではリアリティがないとか、キャラクターをリアルな3Dキャラにするべきだとかいう議論は全く無意味であることが分かる。

この取り組みでもうひとつ重要なのは、店員の側は自宅でもどこでも行うことができる点である。在宅接客店員という働き方が相当リアルに見えてくる。購買履歴や販売実績、会話の内容をAI解析して最適な商品を提案できる。またこのスタイリスト側も、実際の対面ではなかなかうまく話せないような人でも、こうしたシステムの中では生き生きと接客しているという話を聞くことが出来たのも非常に重要だ。

楽天技術研究所の一連の取り組みは非常に興味深く、かつリアリティがある。オンライン店舗としての楽天市場が次の領域に入るためには、こういう挑戦が必要不可欠である。そしてこれらは最新技術を使いながらも、使い所を間違えないところが大切だろう。こうしなことから新しい購買体験と接客体験が見えてきたと思う。YouTuberやVTuberと、ショッピングチャンネルのキャストを併せたような職業が登場するではないかと感じている。

 

ディスプレイの前に顧客がいて、カメラで顧客を撮影して鏡のような状態である。写真右奥に遠隔地にいる想定のスタイリストがいて、HMDを装着し、手にはワイヤレスコントローラーを持っている。なおe-zakkamania storesは女性向けのアイテムしか扱わないので男性がデモを体験するとこういうことになる。

 

店員はVR店舗の中で接客する。

 

以前のバージョンではこうした平面的なWEBページを使って接客を行っていたが、たとえばアイテム選択をしたり、顧客に画像を貼り付けるときに自然に発せられる声が、VR店舗で体を動かしながら行う場合と比較してどうしてもリアルな接客になりにくい。顧客側もいかにも画面見て相手をされているところが透けて見えてしまう。このあたりもものすごく重要なことだ。

 

店員側が顧客の姿を見ながらVR店舗の中でコーディネートを行う。