災害緊急サイネージ導入時の検討事項

Digital Signage /

とある病院から、災害時に緊急情報を放映できるデジタルサイネージの導入を検討したいとのことでご相談を受けた。その病院は聴覚障害者が多いため、緊急時は音声放送だけでは案内できず、サイネージでの誘導を検討しはじめたそうだ。これまでも同様のご相談を受けてシステムを提供したことがあり、いまでもそのようなお話をたびたび伺うため、災害緊急時に対応したサイネージを導入するうえでの検討事項について、ここでも記載したい。

まずは、コンテンツ。デジタルサイネージの特徴として「場所と時間など視聴状況に最適化できる」「同じ視聴状況にある集団に向けて一斉に伝えられる」「ピクトや複数言語によって使用言語の壁や、聴覚障害者にも伝えられる」などが挙げられる。避難や帰宅困難者の受け入れなどの緊急時の運用計画のなかで、これらの媒体特性を活かしてどのような役割をサイネージにもたせるかを検討することになる。たとえば、その場所からの避難経路をピクトで表示したり、水や食料の配布場所をマップで表現したりするのは、サイネージの得意とするところだ。また、被災者や帰宅困難者は広域の情報も求めているため、安全が確保できた場所では、テレビの緊急放送(注1)をそのまま放映することが望まれる。

(注1)放送をデジタルサイネージに利用することは原則として著作権に抵触する。ただし、NHKの緊急放送に限って、事前にNHKと取り決めをしておくことで、デジタルサイネージに無償で利用できる。これは民放などでは原則不可能である。詳しくは一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムまたはNHKの各地の放送局に確認いただきたい。

また、緊急情報のことだけを考えていると、平時に流すコンテンツについて抜けてしまうことがある。今回のご相談でも「そういえば、何もない」となった。主目的は災害対応にせよ、平時の放映時間のほうがずっと長い。設備の有効活用のためにも、そちらも合わせて検討する。

広域情報としてテレビを放映しつつ、ローカルな情報を提供できるL字の画面構成は災害時に適している。

次に、平時から緊急時への切り替えるための運用体制。サイネージシステムのなかには、通常編成の放映中でも割り込みで別コンテンツの放映が行える機能を搭載しているものがある。そのようなシステムであれば、管理画面を操作して緊急コンテンツの割り込み放映ができる。また、インテリジェントなシステムとして、緊急地震速報やビル管理システムなどの外部システムと連携することで自動的に切り替えられるシステムもある。

自動切り替えは、現場の負荷がなく、人を介さないために速報性を確保しやすいのが大きなメリットだ。しかし、台風や豪雨などの荒天時や公共交通機関の障害時は、様々な状況を総合的に判断した対応が求められるため、切り替え基準を定型化するのは難しい。緊急地震速報や火災報知器などの一秒を争う警報は自動化しつつ、その他の情報の配信は、人の判断を挟んだ運用とするのが現実的だ。数年前に警備会社とともに大学向けの災害情報配信サイネージを開発した際にも、運用について議論し、緊急地震速報は自動切り替えとし、それ以外の避難誘導や安全情報については、防災センターの警備員が状況を総合的に判断し、手動でコンテンツを切り替えることとした。

手動での切り替えを行う場合は、できるだけ簡単なしくみを予め用意しておくことが重要だ。警備会社からも、防災センターの通常業務ではパソコンをあまり使わないため、非常時にこれを使ってウェブ上の管理画面を操作する運用は、パソコンをスムーズに行えるスタッフの確保や、マニュアルの複雑化によってコストアップになるために避けたいとの要望をいただいた。そこで、サイネージの切り替え専用端末を設置して、それでコンテンツを切り替えられるようにしている。幸い、まだ大きな災害は直面していないが、年に1度の避難訓練ではスムーズな画面切り替えができることを確認している。

緊急地震速報受信機とサイネージシステムが接続され、速報発報時には自動的に画面が切り替わる。信頼性をもたせるために冗長化構成となっている。

 

右側の小型端末がサイネージ切り替え専用端末で、左側のモニターには学内のサイネージと同じ画面を表示している。