Ars Electronica 2018 Vol.05 リアルとバーチャルを共存させる正しい方法

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Ars Electronica Festivalでは多数のイベントが複数会場で同時に進行していく。そのひとつとして「The 4D-BOX」というイベントが開催された。これはリアルとバーチャルをミクスチャーするという試みで、4つの異なる演目のエンターテインメントやパフォーマンスが公開された。その中でも特に参考になったのが、Noora Hannula Vs. Soma The Augmented-Reality Girl  -THE ULTIMATE BATTLE である。

主人公ノーラは、自分の彼氏であるキャスパーが、AIベースのバーチャルな女性ソマと二股をかけていることを知ってしまう。怒ったノーラがサイバースペースのソマと戦うというストーリーだ。ソマは、実際にすでに販売されているGATEBOXという製品のホログラムによるキャラクターをイメージするとわかりやすいだろう。バーチャルキャラクターを好きになる、生活するということはすでに現実のものなのかもしれない。

実際のステージ上では、ソマはホログラムで、ノーラは本物の女優さんが演じている。専用の偏光メガネをかけるとホログラムは立体的になり、途中で出てくるテキストフォントや、効果のためのCGが空中に浮遊して見える。舞台演出的には、ソマとのノーラのバトルシーンは、まさにテレビゲームのそれと同じである。ソマは予め制作してある動画なので、絡みの部分は女優さんがタイミングや位置を合わせて演じる。詳細のストーリー展開は省略するが、バトルの途中に彼氏から二人に電話がかかってきて、「君だけを愛してるよ」とそれぞれに対して言うのを、お互いが聞いてしまう。そこで二人は共同戦線を張って仲良くなっていくという展開だ。

バーチャルとリアルの設定を交錯させない

さてここからが本稿の本題である。この作品では、もともとバーチャルキャラである設定のソマがバーチャルなホログラムで登場して、生身の人間のノーラはリアルな役者が演じている。実はこれが、バーチャルとリアルの融合において、いちばん重要なポイントだったのだ。当たり前といえば当たり前なのだが、どちらもリアルで存在しうるものをバーチャルで表現する、例えばアイドル本人とアイドルのアバターという設定では、アバター側がニセモノであることが明らかすぎて、ストーリーに没入できない。通常のアニメのように、全部がバーチャルの場合は、すべてがバーチャルワールドで展開できるので、別世界の話として第三者的に受け取ることができる。2018年のデジタルサイネージアワードを受賞した、楽天のバーチャルフィッテングの事例もこれと同じではないかと思う。バーチャルなコンシェルジュには、バーチャルなロボットボイスの方がしっくりくる。

全部がリアルな人間が演じる芝居、逆に全部がバーチャルのアニメは、設定に混乱がないのでリアルはリアルとして、バーチャルはバーチャルとして違和感なく受け取ることができている。しかしリアルとバーチャルが交錯するようなエンターテインメントの世界というものがあるとすれば、表現の広がりに無限の可能性を提供してくれるはずだ。ここでバーチャルなものはバーチャルで表現し、リアルものはリアルで表現をする(このケースであれば生身の役者だ)という設定を守れば、違和感なく、新しい体験価値を生み出せるのではないだろうか。