カメラ解析で店舗の課題が見えるようになる

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2017年11月にオープンした「PARCO_ya」(東京・御徒町)は、各テナントエリアにカメラを設置し、そこで撮影した画像分析を行っていることをウェブサイトに掲載している。それによると「年齢」「性別」の推定を行って統計データにしているほか、入退店時刻や人数、動線を取ることで、「ショップスタッフの効率的な配置」「買い物しやすいレイアウトの設計」に活用しているという。

PARCO_ya 施設案内 来店者属性(年齢・性別)解析サービスについて

これまでリアルな店舗では定量的なデータは売上しかなかったが、このようなシステムを導入することで、店内にどの程度のお客を引き込めているのか、回遊時間はどの程度なのかなど、購買前のお客の動向がわかるようになり、それに応じて対策を打てるようになった。

一例を挙げる。登山グッズなどを取り扱う、とあるアウトドア専門店は、外からの見えやすさをまったく考えずに店舗を設計していた。専門店だから目的買いのお客が多く、可視性は重要ではないと考えていたためだ。それよりも、商品の詳細を解説するパネルなどの設置を優先して高い壁を設置していた。それに対して「可視性を高め、フックとなる商品を店の外からでも見えるようにすることで、店舗前を通りがかったライトユーザーを取り込めるのではないか」との意見が出て社内で議論になった。そこで「客の流入数」や「回遊時間」「フック商品の売上」などの評価指標を設計したうえで、それらのデータを取るためのカメラ分析ツールを導入。壁の高さを変更した改装を実施し、店舗内の可視性の違いによって各評価指標にどのような変化が出るのかを検証した。すると、改装前後でフック商品の売上はほぼ変わらず、それを見る限りでは、「可視性を高めることでライトユーザーを取り込める」との仮説を実証できなかった。ところがカメラの画像分析で取得した「流入数」「回遊時間」を比べてみると、改装によって流入数が改善したことや、長い回遊のうえでフック商品とは異なる商品に手を伸ばしていたことが判明した。この結果を受け、同社では可視性の改善によってライトユーザーを取り込めると判断し、店舗内装を見直している。このようにECでは当たり前に取得していた「流入数」「滞留時間」「コンバージョン率」をリアル店舗でも取れるようになったことで、それをもとにした細やかな改善ができるようになった。

さらには、店内カメラを活用した、新しいビジネスモデルの店舗もできている。アメリカのパロアルトにある「b8ta」は、大手ブランドやベンチャーのデジタルガジェットを販売している店舗だ。店内には商品棚はなく、ゆったりとしたショールームのようななレイアウトになっており、ベータ段階にあるような最新のユニークな製品が並べられている。お客は、ゆったりとした空間のなか、各製品を自由に触り、試すことができるようになっている。この店舗がユニークなのは、売上のほとんどは購買によるものではなく、店舗内のカメラで収集されたお客のリアクションをデータとしてメーカーに提供することで上げているところだ。お客はさまざまなユニークな商品に触れて体験できるため、この店を訪れる。メーカーは消費者に製品を体験してもらえる場を得られるうえ、さらにはその反応をデータとして取得し、マーケティングの知見を得られる。アーリーアダプターとメーカーのマッチング結果をカメラ映像で定量化し、それをもとにしたマネタイズを実現している。

カメラ映像の分析は、リアルな店舗での評価指標をECに近づけることで、細やかかつ高速な改善を実現するだけではなく、小売のEC化が進んでリアルな店舗の役割が改めて問われるなか、「偶然の出会い」「モノに触れる体験」の価値を最大化した、新たなビジネスモデルを持った店舗を生み出しはじめている。