SF映画にみるデジタルサイネージへの期待度と未来感

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2018年夏に公開された細田守監督の「未来のミライ」は、主人公「くんちゃん」が、未来から来たという自分の妹「ミライちゃん」と一緒に、時を超えた大冒険を繰り広げるというストーリーだ。作中に少し未来の東京駅が出てくるのだが、なかなか興味深い描写だった。お馴染みの【京浜東北線 上野・秋葉原行き】や黄色い【八重洲中央口】などの案内サインが全てデジタルサイネージ化し、多言語に対応していたのである。英中韓はもちろん、アラビア語まで。
あえて大きな主語を使うと、おそらく多くの人類が期待している未来は全ての看板がデジタルサイネージ化され、動画が表示され、多言語切り替えができるという世界で、それが「未来っぽさ」なのではないか。「未来のミライ」というキーワードで感想を検索すると「未来の東京駅が未来っぽくてすごい」という感想が出てくるのがその証拠のように思う。他にも未来の新幹線のデザインがかっこいいなど理由は他にもあろうが、現実に則した未来っぽさがより「ありそうなすごさ」を出している。それほど作中の未来の東京駅は派手なのにシックで、デジタル化が進んでいて、大都市東京を支える場所として鎮座していそうな描写だった。

到達すべき「未来感」

先に書いてしまったが、とりあえず何でもデジタルサイネージ、というより動いているものが流れている事が「未来感」の正体であり、そこにデジタルサイネージの役割や期待されているものが含まれているのではないか。
「動く」というのはそれだけで強烈な印象を残す。例えば、初めて白黒テレビが登場したとき、人々は箱の中で繰り広げられる世界に夢中だった。私が生まれたときには既にテレビはあったが、それまでポスターしか貼っていなかった駅の柱がデジタルサイネージ化したのを見たときは大変驚いた。ほぼ等身大の加藤清史郎君こと子ども店長が、駅の柱の中で踊っているのを見た時、まさか動くとは思っていなかったので柱の中に閉じ込められているのかと錯覚したし、デジタルである事に更にビックリし、初めての体験に胸が躍った。初めてデジタルサイネージジャパンを訪問したときも、とんでもない未来がやってきたなとワクワクしたものだ。それは今思えば全て、「絵や写真が動いている」という点に尽きる。

ではデジタルサイネージが普及した今、更にこの先の未来に期待されるものはなんだろうか。未来の世界をテーマにした過去のSF作品を参考にしてみると、これが結構面白い。
もちろん先の未来のミライにおける多言語化もそうだし、例えば2002年公開の「マイノリティ・レポート」では通行人によってデジタルサイネージの広告が変わるというシーンがあり、未来世界を印象付けている。これは最近のセンサーやカメラの技術、AIによって技術的に可能なレベルに来ており、つまりはダイナミックデジタルサイネージであり、様々な企業や場所で実証実験が行われている。未来はすぐそこまできている。マイノリティ・リポートはその他の、当時思い描いていた未来が凝縮されていて、どれが実現していてどれがもうすぐでと、いま読み解いていくと大変面白い。

冒頭でA long time ago in a galaxy far, far away…と語られるスターウォーズシリーズ。1977年に公開された「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」で、ロボットのR2-D2から投影されるレイア姫の3Dホログラムは初見では結構衝撃的であった。冒頭ではずっと昔の物語だと言われているのに未来っぽさが演出され、作中の惑星では今の時代とは技術力が違うという描写になっている。宇宙規模での帝国軍と反乱軍の戦争が近々起こるとは思えないが、ブルーバックなしでリアルタイムにレイア姫を3Dで切り取るという技術はNTT技研のkirari!で可能であるだろうし、あとは何もないところに立体的に表示するという部分である。やっぱり未来はもうすぐそこだ。

新しい作品だとマイノリティ・リポートと同じくスピルバーグ監督の「レディ・プレイヤー1」の世界はヴァーチャルリアリティなので、世界そのものが映像だったりする。現実世界とバーチャル世界を繋ぎ、バーチャル世界での感覚をよりリアルにするために様々なセンサーを用いているので、レディ・プレイヤー1の世界の現実化を真面目に考えると大変面白い。未来ではドローンが気軽にデリバリーを行い、カメラで人を簡単に見つけて犯罪抑止になったりしている。やはり未来はすぐそこだ。

現実の世界はまだまだアナログだらけである。様々な条例があれど、例えばお店の壁一面がデジタルサイネージになったり、窓ガラスがサイネージだったり、電柱がサイネージだったり、視点を変えればまだまだサイネージ化できるところは沢山あるはずだ。SF映画を見ていると発想は無限のように感じる。自分が細田守やスピルバーグになった気持ちで街を歩いてみると、面白いかもしれない。これからもアイディアをもらうという名目で、SF作品を沢山拝見させて頂こうと思う。