オープンソースなデジタルサイネージシステム

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海外では、「Concerto」「Xibo」「Screenly」などオープンソースのデジタルサイネージの再生ソフトが10年ほど前から数多く存在しており、多くの利用実績がある。しかし日本ではオープンソースのデジタルサイネージの再生ソフトを大々的に利用した事例はあまり聞いたことがない。

現在、大規模なデジタルサイネージを設置する際は、デジタルサイネージを企画・製造する会社からディスプレイ、デジタルサイネージの再生機器、CMS(コンテンツ管理システム)を購入し、設置工事、コンテンツの作成、運用保守などを丸ごとサポートする流れが一般的だ。ただ、初期費用やカスタマイズ費用、月々のサポート費用が高額になりがちであり、デジタルサイネージの導入を考えている店舗や施設の担当者が躊躇してしまう。デジタルサイネージの低価格化が、これまで以上に重要になっている。

なぜ初期費用やカスタマイズ費用がかさむのか?

ディスプレイ、デジタルサイネージの再生機器などのハードウェアの購入価格を下げることは難しいが、各会社が個別で、ほぼ同じような機能を持ったデジタルサイネージの再生ソフト、CMS、再生機器用のカスタマイズしたOSなどを開発するため、膨大な開発費がかかっており、初期費用や月々のサポート費用を高くする一つの要因でもある。

その割には、会社によってはデジタルサイネージの再生ソフトの品質が悪く、機器のセキュリティ対策が万全ではない。CMSの操作方法が複雑で洗練されておらず、画像や動画の差し替え、再生スケジュールの変更ができるだけで、画像や動画自体は店舗や施設の担当者や広告代理店が、ペイントソフトや動画編集ソフトを利用して作成しなければならない場合が多い。CMSのみで全てのコンテンツを簡単に差し替えることが難しいのが現実である。それにより、運用開始後に簡単なコンテンツを差し替えるだけでも、専門の業者にお願いしなければならず、店舗や施設の担当者の負担が重くなり、徐々にデジタルサイネージが活用されなくなる事例も増えてきている。

機能をカスタマイズする際にも、各会社が独自に開発したデジタルサイネージの再生ソフトやCMS向けに、新規に機能追加を行わなければならず、プログラムが再利用される割合が低く、カスタマイズ費用がどうしても増える傾向だ。

再生ソフトとCMSをオープンソース化

デジタルサイネージの再生ソフトやCMSをオープンソース化(無償で公開し、誰でも自由に改良・再配布ができるようにしたソフトウェア)できれば、初期費用やカスタマイズ費を大幅に抑えられる。Linux(組み込み機器 や Raspberry Pi)WindowsAndroidiOSなどのマルチプラットフォームで利用できる高性能なデジタルサイネージの再生ソフトを世界中の方々が無料で利用することができる。

Webサイトを構築する際は、「WordPress」の様に圧倒的なシェアを持つCMSが存在するが、デジタルサイネージの場合は全世界で圧倒的なシェアを持つオープンソースのデジタルサイネージの再生ソフトとCMSが、まだ存在しないのが実情だ。現在は、高性能なデジタルサイネージの再生ソフトやCMSは、全て有料でプロプライエタリ・ソフトウェア(ソースコード、仕様などを公開していないソフトウェア)しかない。

WordPress」の場合は美しい無料のテンプレートが多くあり、それを利用してWebサイトを簡単に作成することができる。今後、同じようにオープンソースのデジタルサイネージの再生ソフトとCMSが普及すれば、画像や動画の作成を専門の業者に依頼することなく、美しい無料のテンプレートから簡単な操作で画像や動画を自動で作成する事も実現できる。また、WordPressのプラグインの様な機能を、デジタルサイネージのCMSにも搭載すれば、無料で公開されたプラグインを利用することにより、カスタマイズ費用も低く抑えられる。

オープンソース化が進めば、専用ハードウェアの開発や、デジタルサイネージの企画やコンテンツ作成のみに力を注げられるようになる。日々、デジタルサイネージのシステムが複雑になり、各社でそれぞれデジタルサイネージのシステムを開発するのは限界が来ている。世界中の開発者たちと知恵を絞り、一緒に力を合わせて開発する時代なのではないか。

オープンソース化するメリットとデメリット

メリット:
・ 無料でデジタルサイネージの再生ソフトやCMSを利用できる
・「WordPress」の様に専門的な知識がなくても利用できる
・一番大事なコンテンツ作成のみに力を注げる
・信頼性・セキュリティの向上
・プラグインによるカスタマイズ性の向上
・セットアップ済みOSイメージを配布して組み込み機器やRaspberry Piに簡単にインストールできる

デメリット:
・無保証である
・よりカスタマイズする際に知識が必要
・利用者が少ない場合に、メンテナンスされずに開発がストップしてしまう恐れがある
・無料で公開されたテンプレートやプラグインが増えていかない可能性がある

今後、世界的にオープンソースのデジタルサイネージの再生ソフトとCMSの開発が、より活発になることに期待したい。