商業施設でのサイネージ広告商品のあり方

Digital Signage /

商業施設では新築時にデジタルサイネージを設置することが当たり前となった。イベントやセールの案内などの販促を行ったり、タッチパネルで館内の案内を行ったりしているほか、最近ではレストランやトイレの混雑状況を案内するものもある。また、主たる目的は販促のままだが、デジタルサイネージを数十面も設置するとモールにとって費用負担も大きいため、それを軽減するためにロールの一部を広告枠とし、その売上に期待するケースも増えている。もともと多くの商業施設では、デジタルサイネージ以外にも、柱巻きポスターや垂れ幕、フードコートのテーブルや紙コップ、エレベーター前ボードなど、大小様々なスペースやモノを広告面として提供している。それらの延長線上に、販促用サイネージでも広告を表示したいというのは自然な流れといえる。しかし、デジタルサイネージは、それらの媒体と比べて特性が大きく異なるため、「柱巻きが1面2週間で5万円だから」と、それらに合わせて広告設計を行うのは好ましくない。特性に合わせた設計が必要だ。

商業施設の運営者側からみて、柱巻きポスターや垂れ幕などのアナログ媒体とデジタルサイネージとの一番大きな違いは、費用における固定費と変動費の割合である。柱巻きや垂れ幕は、すでにある空きスペースや設備を使うために基本的に固定費はゼロだが、印刷や設置など面数や更新頻度に応じた変動費は大きい。そのため、必要な経費に手数料を乗せた価格体系となることが多い。一方でデジタルサイネージは、機材の減価償却や運営が固定費となる一方で、面数や更新頻度での変動費は極めて小さい。コスト積み上げ式の価格設計ではなく、細やかな運用でもコストが増えないことを強みにした商品設計が求められる。

商業施設内のデジタルサイネージで、広告主としてもっとも期待できるのは、テナントである。顧客ターゲットが一致しており、購買に近いところで認知を広げられ、店長会などを使って効率よく営業活動を行えるためだ。しかも、テナントやそこで働くスタッフが、広告をきっかけとして商業施設内のデジタルサイネージに興味を持ち、さらにはそこで自分たちのコンテンツが流れるのを見てもらうことで、彼らに喜んでもらえる。これは広告売上よりも大きなメリットと言えるかもしれない。そのため、まずはテナントが購入できる、したくなる広告商品として設計しなければならない。

テナントに広告枠を購入してもらうための一番のポイントは価格である。商業施設内の垂れ幕や柱巻きポスター広告は、数万円以上の商品がほとんどだ。しかし、テナントの店長権限で使える販促費は、月に1万円程度しかないことが多い。また、広告主は、広告枠の購入のほかにコンテンツ製作コストも負担している。数万円という広告枠は、本社やメーカーから販促支援金が出たり、映像素材の提供があったりしない限りは、テナントが手を出すのは困難だ。テナントが気軽に出稿するためには、3,000円、5,000円などの価格に抑える必要がある。ポスターでは難しいだろうが、デジタルサイネージでは、枠数を多く用意できるうえ、さまざまな放映期間を設定できる。そのような単価でも十分に商品化できるはずだ。

ただ、これを実現するには、運用リソースの確保が必要だ。テナントが用意するデジタルサイネージ用映像は、予算がないためにパソコンに手慣れた店員が片手間に制作することもあり、絵が粗かったり縦長比率がモニターと異なったりする映像が入稿されることが少なくない。そのようなコンテンツを確認して修正依頼を出しながら進行管理を行い、システム設定や放映の確認までを行うには、それなりの手間が必要となる。商業施設の運営では、販促支援の業者を入れることが多いが、そのような業者なかにはデジタルサイネージの運用に慣れており、動画製作や管理を含めて請け負うところもある。販促支援業者を選定する際には、そのような点も含めて考えるべきである。