デジタルサイネージに起こる問題とその解決策(後編)

デジタルサイネージに起こる問題とその解決策(交通誘導)

Digital Signage/IoT /

広告や販促ではないサイネージの例として、千葉県柏市の商業施設「セブンパーク アリオ柏」で導入された、交通誘導のデジタルサイネージについて解説する。

お客様の車を誘導するサイネージシステム

大型商業施設のほとんどは大規模な駐車場を備えており、多くの人が車で来場する。駐車場の入口には、空きスペースを案内する電光掲示板があるので、客はスムーズに駐車することができる。しかし、施設から出るときには、道路の混雑状況の表示がないことから、渋滞に巻き込まれることがあった。夕方は施設から帰る客が増えるが、すでに渋滞している方向に車が流れてしまうと、さらに渋滞範囲を広げることとなり近隣の住民にも迷惑となってしまう。

この対策として、セブンパーク アリオ柏では、客に迂回路を知らせ、誘導するサイネージを導入している。これにより、近隣の道路の混雑状況をもとに車を誘導し、一つの道路に車が集中することを防ぐことができる。

管理室で集中管理することでコスト削減

従来、混雑状況をもとに車の誘導を行おうとする場合、施設周辺の道路に警備員をくまなく配置し、無線で連絡を取り合い、連携して車を誘導するという方法が行われてきた。しかし、これでは多くの人員が必要になり、コストがかかるという問題がある。そこで監視カメラや周辺道路の交通情報を用いて管理室から集中的に管理できるシステムが導入された。

表示切り替えの操作に関する問題

このシステムを検討していく上で問題があった。デジタルサイネージの表示の切り替えにパソコンを使う場合、パソコンスキルを持った警備員を管理室に配置する必要があるが、パソコンスキルを持った警備員は数少なく、コストも高くつく。誰でも操作しやすいタブレットのような汎用端末を用いる方法もあるが、汎用端末ゆえに、必要のないアプリを起動しないための利用制限や、アカウントの設定、また充電方法の検討など、さまざまな手間が生じてしまう。

直感的な操作の専用端末を用意する

この問題に対し、デジタルサイネージの表示を直感的に切り替えられる専用端末を用意することで問題を解決した。

専用端末のメリットは、直感的な操作による利便性だ。パソコンスキルの有無に関係なく、誰でも簡単に使うことができる。また、細かい設定も不要でコンセントにつなぐだけで利用できるため、運用や管理の手間を大幅に省ける。

レガシーな技術と新たな技術の融合

これまでも、専用端末を使った交通誘導システムは存在した。商業施設や空港などの駐車場の入口に表示されている空車案内、例えば「Aエリア 満車」「Bエリア 空車〇台」といった表示がそれだ。このような駐車場誘導のシステムは、そのほとんどが駐車場管理に特化したクローズドな環境で開発されている。そして、このようなシステムを開発した企業はデジタルサイネージを手がけることはなく、また、デジタルサイネージに特化した企業が、このような専用端末を使ったシステムを開発することもあまり例がない。両方のメリットが融合したシステムという点で、セブンパーク アリオ柏の交通誘導サイネージはユニークな事例といえる。

外部システムからの情報による拡張性

インターネットに接続したオンラインのデジタルサイネージは、ウェブの技術を活用して外部システムから収集した情報の発信が可能だ。たとえば、日本道路交通情報センターが配信する渋滞情報を表示したり、災害時には緊急地震速報のような情報を表示したりすることもできる。このような拡張性は、クローズドなシステムでは実現できない、オンラインサイネージの大きなメリットといえる。

外部システムからの情報を活用する場合の注意点

外部システムからの情報活用については注意すべき点もある。とある施設で、緊急地震速報をデジタルサイネージで表示できるようにしたとする。大規模な施設だと、その施設独自の防災システム(大きな地震の際に非常ランプが点灯し、エレベーターをストップさせるなど)を備えていることがほとんどだ。すると、場合によってはデジタルサイネージの情報と施設の防災システムの動作に齟齬(そご)が出て、どちらが正しいのかわからず混乱が生じるということも考えられる。このような問題を防ぐために、サイネージの目的を定めてどのような運用を行うのかを事前にしっかりと決めておく必要がある。

また、情報取得にかかるコストについても注意が必要である。取得する情報の種類や、表示させるデジタルサイネージの数などによって大きなコストが発生する場合がある。運用の仕方によってコストを削減できる可能性もあるので、この点も事前の計画段階で十分な検討が必要となる。